小学校4~6年の子をもつ保護者の皆様へ

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日常の会話やかかわり方のヒント
茨城県学校長会 会長 志賀 正章 氏

 起床時の「おはよう」と就寝時の「おやすみ」という家族同士のあいさつは、その日一日の会話のONとOFFのスイッチであると思います。たった一言ですが、その時の表情や声のトーン次第で、気持ちが明るくもなれば暗くもなります。朝一番に明るく「おはよう!」の言葉を交わすことは、家族一人一人が安心して一日をスタートさせ、学校や職場で頑張れる原動力にもなります。子どもにとっては、その日の学校生活がスムーズに送れるかどうかに影響しているかもしれません。家庭での一日の始まりと終わりをちょっと振り返ってみてはいかがでしょう。
 子どもが成長するにつれて、会話に悩んでいるという保護者の方の声を時々耳にすることがあります。幼い頃には気にしていなかった「子どもとの距離」をコントロールすることも、子育てでは大切なことであると思います。何かを一緒にやりながら最近の様子を聞いたり、上手にできたことをほめたりするなど、日常生活の場面を生かした会話を心がけるとよいと思います。
 私の経験を思い返すと、車に乗っているときの何気ない会話から我が子の様々な思いを受け止めていたことを思い出します。時には、目と目を合わせてしっかり話すことも必要ですが、目を合わせないで話す場面も大事にしていました。
 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」 
 山本五十六の言葉です。人材育成のための名言ですが、子育てにも通ずるものです。なかなか上手くできないことも一歩ずつの努力を励まし、認めていくことで、やる気を引き出す。子どもにとっては、称賛と少しのご褒美がうれしく、向上心につながることを忘れずに、日常のかかわりを大切にしていきたいです。

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子ども食堂に行ってみよう
認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ 常任理事・事務局長 大野 覚 氏

 みなさんは子ども食堂にどのようなイメージをお持ちですか。食に困った貧困家庭が行くところ、というのが報道を通じた一般的なイメージではないでしょうか。
 5年ほど前に実施した「茨城県子ども食堂実態調査」では、生活困窮世帯の子どもだけを対象とした子ども食堂は1割にも満たない状況でした。この傾向は現在も同じです。実際には、誰もが来られる場所。生活困窮世帯の子どもも、一般のご家庭も。子どもも、保護者も、おじいちゃんも、おばあちゃんも。多世代交流、地域とのふれあいを楽しむ場というのがほとんどの子ども食堂です。食に困っている貧困家庭の子「も」行ける場所ですので、児童館と同じです。児童館は対象を区切っていませんよね。
 もちろん、なるべく辛い状況にある子どもたちに多く来てほしいと願っている子ども食堂もあります。誰もが分け隔てなく来られる環境を整える一方、行政や地域とのネットワークを活かし、困っている子どもや世帯に子ども食堂の情報を積極的に提供し、来てもらえる工夫を行ってもいます。地域社会からの貧困というレッテル貼りを気にせずに、誰もが安心して来られる場所を目指そうという方針の子ども食堂がほとんどです。
 「困窮世帯ではない私が子ども食堂に行ってしまうと、貧困世帯の子どもの分の食事を奪ってしまうことになるのではないか」という議論が、1年ほど前にSNSを通じて話題になりました。皆さんはどうお考えでしょうか。上記の実態を鑑みれば、むしろ誰もが積極的に子ども食堂に行って、関わって欲しいと私は思います。孤独・孤立の状態にあるひとり親家庭も多くいますので、子ども食堂を通じて地域の様々な方と交流し、つながりが生まれることもまた大事だと思います。
 茨城には令和5年9月現在で185の子ども食堂が確認されています。「そんなにあるの」というのが一般的な感覚だと思います。月1回程度開催する小規模な子ども食堂が多いですが、これだけあれば、いつでも行けると思います。子ども食堂サポートセンターいばらきのウェブサイト(「子ども食堂 茨城」で検索)では、各子ども食堂の連絡先や地図も用意してあります。お近くの子ども食堂にぜひ行ってみてください。

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楽しみながら非常時に備える防災キャンプのすすめ
一般社団法人茨城県キャンプ協会 会長 園部 高生 氏

 防災キャンプとは、簡単に言うと「避難生活訓練」です。災害時には当然暮らしに必要な物質が足りません。今ある限られた物の中で、知恵と知識を使い、創意工夫をしながら生活をしていく必要があります。ただ、何の用意もなく突然そのような状況に陥ると、戸惑い、何もできなくなる可能性もあります。そうならないために備えておく手段の一つが、防災キャンプです。

 実際の防災キャンプでは、様々な火の起こし方、ロープワーク、テント設営を実践します。避難生活を想定し、そこで役に立つであろう知識・技術・アイデア等を身につけます。現代では体験することがなくなった様々な生きるための技は、やってみると楽しいもので、子どもたちは喜んで取り組んでくれます。大自然の中で様々なプログラムを実践し身につけることは、達成感を味わい自信を持てるようにもなります。

 災害に備えての防災キャンプではありますが、一方で私は教育的意義を強く感じます。人間が他の動物と違うのは、道具を使えることだと言われています。道具は元々あるものではありません。不自由な暮らしの中で創意工夫をしながら、トライandエラーを繰り返し少しずつ進化したのです。そうして便利な道具に満ちあふれて快適に暮らせるようになった現代人は、昔ほど頭を使わなくなりました。創造力を発揮することなくただ消費するだけの生活では人間の生物としての本能・能力はどんどんすたれてしまいます。現代においては、意識的に不自由な環境に身を置く機会をつくることが、生きる力を養う上で必要なのではないかと思います。これは子どもへの教育にとどまらず、現代に生きる全ての者に生涯にわたって身につけてもらいたい姿勢です。現状に満足せずより良く生きようという意識を持つこと。実は非常時において一番必要なものは、そういった前向きに生きようという姿勢です。

 防災キャンプは、非常時の備えというだけでなく、楽しみながら、生きる力を養う…というより呼び覚ますというのでしょうか、もともと持っている本能を刺激して、本来の「人」を創ってくれるように思います。ですがまずは、そんな下心は置いておいて、楽しんでもらいたいと思います。

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「障害のある我が子へのかかわり」
県立水戸高等特別支援学校 校長 村山 亮 氏

 小学生高学年になると身体が大きく成長し、さらに自分のことを客観視する力がつき始める時期です。個人差に気づく中で自己肯定感が下がり始める時期でもあります。また、周囲の目を気にし始め、努力をしても克服できないことも出てきます。適切な対処方法を知らないと、「みんなはできるのにどうして自分だけできないのか」、「頑張っているのにうまくいかない」といった失敗体験を多く積み、劣等感を抱え続けてしまう場合があります。あるいは、うまくいっているように見えても、無理をし続けて心身のバランスを崩してしまう可能性もあります。
 思春期を迎えて、周囲への反抗、友達間の人間関係の悩み、不登校、学習の遅れなど、想定はしていたとしても現実的になると、少し戸惑うことがあるかもしれません。周囲と比べるのではなく、お子さんの良さを見い出し、他者との違いを受け入れること、困難な状況の対処方法を知り、状況に合わせて対応していくことが大切です。
 また、お子さん自身も自分を大切にできる力を身につけていくこと、自分自身の良さを自覚し他者との違いを受け入れること、そして、困難な状況の対処方法を知っていくこと、自分自身を大切にできる力を身につけていくことが大切です。  
 しかしながら、養育者だけで具体的な方策を考え、実行することは大変なことです。そこで、学校をはじめとし、療育機関、医療、行政等と連携をとり、チームとしてお子さんを支えていくことが大切ですし、必要となります。行政や学校と相談しながら「個別の支援計画」や「個別の指導計画」を作成し対処していくことも有効な方法です。いろいろな方の話を聞いたり自分の思いを伝えたりすることによって、養育者自身が安心しますし、より子どもに合った子育ての仕方を見つけることにつながります。「この子にあった生活の仕方がもっと早くわかっていれば、親子共々こんなに苦労することもなかったのに」と振り返る方もいらっしゃいます。
 お子さんの将来に向けたより良い「自立と社会参加」を考えるためにも、相談できるネットワークをできるだけ早くから築いておくことはとても大切です。

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子どもの話を聴くために、自分の心を整えましょう!
NPO法人 ネットワークサポート親楽 理事 櫻井 佐智子 氏

 私は、日頃、地域の子育て支援をさせていただいていますが、カウンセラーとしても活動しています。(私事ですが、すでに3人の娘は結婚して、6人の孫がいますので、皆さんの親世代ですね。)
お話をきちんと聴くためには、自分の心の状態を整えておくことが必要となります。心身が疲れていると、余裕がなくなり、聴くことができなくなってしまうからです。
 では、どうやって、心を整えたらいいのでしょうか?あなたの心の声を聴いてもらうことです。
近くにきちんと聴いてくれるマイカウンセラーをつくってください。
実は、私のお抱えカウンセラーは、子どもを通じて知り合ったママ友たちです。今でも、月1回のお喋り会で、お互いに心を整えています。
 きちんと聴いてくれるというのは、先ずは、否定されることなく、「そうなんだぁ」「それは心配だね」と、あなたの気持ちに寄り添ってもらえることで、あなた自身が癒されたり、安心したり、心があたたかくなることではないでしょうか。
 不思議なことに、きちんと聴いてもらえると、自己肯定感が高まって、次に行動する元気が出てくるのです。
 話の途中で、早々に解決策や原因探しをされると、「あ~話さなければよかった」と思った経験はありませんか? 先ずは、「今、どんな気持ちでいるのか?」を聴いてもらいたいですよね。
 私が、迷いながら、失敗しながらも子育てできたのは、聴いてくれる人がいたからです。安心して話ができる子育ての仲間をぜひ探してほしいと思います。
そして、その中で心を整えて、あなたも「きちんと聴けるあったかい人」になってほしいと思います。親として育つためにも・・・。
 

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親子で語り合う
茨城県学校長会 会長 大塚 昌弘 氏

 今年度はコロナ禍にあっても様々な感染症対策をとりながら、中学・高校総体や高校野球、吹奏楽や合唱のコンクールなどが実施され、目標としてきた大会で子供たちの必死な姿を見ることができました。一方で気になったことは、そのような機会を閉ざされてしまった昨年の中学校3年生や高校3年生は、どのような気持ちで今年の大会を見ていたのだろうかということです。とても悔しく残念な気持ちでいっぱいであったろうと想像します。なぜなら、毎年最後の大会やコンクール等では、様々なドラマが生まれるとともに、そこでの活躍が進路に結びついたり、今後の自信や意欲につながったりして、その後の人生を左右する機会ともなり得たからです。
 しかしながら、そこで考えておかなければならないことは、今後先行き不透明で予測困難な時代を生きる子供たちには、同じようなことが繰り返し起こることも考えられるということです。
 そんな未来を生きる子供たちに必要なことは、自己の可能性を広げ、これまでの経験や知識にとらわれず物事を柔軟に考え、自力で解決できる考える力、新たなものを生み出せる発想力、他者と協働できる力、新たなことに挑戦できる実践力を付けてやることです。想定外の出来事に遭遇しても、たくましく生きていけるようにすることなのです。
 そのためには、保護者の皆さんも予測できない非連続的な変化が起こるであろう社会を前向きに受け止め、継続的に新しいことを学び続ける大人の姿を身をもって示しながら、子供が安心して学び続けられる環境を共につくっていくことが大切なのではないでしょうか。そして、ものの見方や考え方、これからの未来、夢や希望など今感じていることや考えていることを親子でじっくり語り合うことが、自己の可能性を広げつつ、たくましく成長することにつながるのではないかと思います。
(執筆時の職名で掲載しています)

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生活習慣を整えることから
茨城県学校長会長 小野瀬 繁子 氏

 12月に中学校の入学説明会がありました。入学までに購入しておくもの,入学式当日の日課,学校行事,進路指導や部活動の説明など,たくさんの情報を一気にお伝えすることになります。本当は,事務的なことばかりでなく,中学生になるとどのような環境の変化があり,人間関係づくりや自分と向き合う困難さがあるのか,入学前の不安を保護者の方々と共有し,子供の成長を共に支えていきたいということをお伝えしなければならないといつも感じています。
 さて,お子さんは,毎朝ほぼ決まった時刻に一人で起きられるでしょうか。朝食を食べて登校していますか,睡眠時間は確保されていますか。小学校中学年になれば,おそらく一定の生活行動が確立していることでしょう。でも,中学校入学後は,そのパターンが一時的に混乱します。
 何事もスタート時には,とても体力と気力が必要です。新しい環境への適応には大人でもエネルギーが消費されます。小学校6年生はたくましく,しっかりしていますが,中学校に入学したとたんに,最も幼く,不安定な存在に見えてきます。4~5月の中学校1年生は,登校するだけで精一杯という子もいます。でも,夏を迎える頃には安定してきます。それは,身体の成長はもちろんですが,生活のリズムを修正し生活習慣が整ってきた証拠です。
 「中学生になるまでにどのような準備をすればよいのですか。」と小学校6年生にもよく訊かれます。決まった時刻に自分で起きること,朝食を食べて登校すること,前日に学校の準備を自分ですること,帰宅後の時間の使い方が一定していること,睡眠時間を十分にとっていることなど,これらの基本的生活習慣が身に付いていることが一番の準備です。
 学校生活は盛りだくさんです。部活動ばかりでなく,学習も踏ん張りが必要です。青年期の入口にある身体と心の急激な成長を,ご家庭と学校でしっかりと支えていきましょう。
 

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過敏な子の理解と上手な関わり方を考える
茨城県公立学校スクールカウンセラー(臨床心理士・公認心理師) 深谷 佳子 氏

 不登校を始め,さまざまな不適応症状を訴える子の特徴の1つに,環境や他者の反応(言動)に対する過敏さを感じるケースが少なくありません。お友達の些細な言葉に深く傷ついたり,先生がクラス全体や誰か別の子を叱責した時に,不安を強くしてしまったりするのです。登校しぶりが始まり原因がわからない親御さんが必死になって聞き出すと,暫くたってから,先ほど挙げたようなエピソードがポツポツと語られます。「そんなの気にしなくて大丈夫!」,「先生に言ってあげるから・・・」と,優しくなだめていた親御さんも業を煮やし「いい加減にしなさい!」,「怠けたいだけじゃないの?」と苛立ちをぶつけて,関係をこじらせてしまい「もうお手上げです!」と相談室にいらしてくださいます。このようなお子さんには,過敏さの他に,納得するまで動かない頑なさもあるように感じます。
 昨今,HSP/HSC(ハイリーセンシティブパーソン / ハイリーセンシティブチャイルド)という言葉をTVや書籍,ネットで目にする機会が増えました。「うちの子はHSCだと思うのです」と話される保護者さんもいます。日本では,医学的な定義や診断基準はなく,発達障害との関連性も話題になりますが明確にはなっていません。そこで,そのような相談があった時は,診断名等はさておき,目の前のお子さんの特徴を理解して尊重し,頑なになった心をどうやって弛めたらよいかを話し合います。嫌なことやできないことを無理強いするより,得意なことやできることから始め,親子の対話がちゃんとできるようになることが先決と提案したりもします。
 自分の気持ちを表現しない子に,「ちゃんと言わなきゃわからないよ!」「そんなことでは将来働けない!」などの傷つく言葉で叱責し自己肯定感を低くしてしまうことは避けたいものです。どうしたらよいかわからない…そんな時まずは,スクールカウンセラーや相談機関の心理士と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

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自分のことを自分でできる子どもに! ~長期休校を利用して~
開善塾教育相談研究所所長 藤崎 育子 氏

 新型コロナウィルス感染防止策で、全国各地で休校となりました。連日マスコミが保護者や子ども、そして学校の先生の不安や、不満を取り上げています。
 突然決定されたことであり、様々な課題があることは事実ですが、これをチャンスと捉えて、家庭での子どもの日常を変えてみるのはいかがでしょうか?
 不登校やひきこもりの青少年の家庭に出向き、訪問相談という仕事をしていると、各家庭の様子を見ることができます。不登校・ひきこもりと言っても、それぞれ事情があり、百人百様です。が、学校や社会への復帰を遂げた後に直面するハードルは、心理的なことというより、生活習慣からくる問題の方が大きいように思います。例えば、朝起きられないことで、せっかく合格した学校や、採用された職場をやめてしまうというケースが少なくないのです。
 まずは、子どもが自分の力で朝起きる習慣づくりを目指してみませんか。
 親御さんから話を聴いていると、高校生になっても、子どもがなかなか起きないので毎朝のように言い争いになってしまうという話は少なくありません。  朝から親子共に不機嫌になることは誰の得にもなりません。子どもが自分で選んで目覚まし時計を準備するといったことでもいいでしょう。まずは親子で話し合って、何時にどう起きるか決めるのです。うまくいかない場合は、一度声をかけるという約束をしたりすることもよいでしょう。その時は、命令調でなく、「7時よ」と時刻を明るい声で告げてみましょう。食事の時は、自分でご飯をよそう、パンを焼くといった食卓の準備を子どもが自然にできるようになるかが重要です。
 ひきこもる青少年に多く見られる共通点として、食事時に自分のご飯や味噌汁をよそわず、食後の片付けもしたことがないということがあげられます。洗濯機も使ったことがなく、ごみを出したこともない。やかんでお湯を沸かしたことがない子もいます。
 子どもの頃から、ご飯をどのくらい食べたいか自分で考え、自らお茶碗によそわせる。それには親が子どもに教えることが必要です。一見簡単そうに見えることでも、まず親が手本を見せ、実際にその場で子どもにさせてみるのです。親が機嫌よく、教えていけば、子どもも失敗を繰り返しながら、できるようになっていきます。
ひきこもり青少年ですが、そうじ、洗濯など、自分のことを自分でするようになると、だんだんしっかりしてきます。特に火や刃物を使った料理ができるようになり、仲間と食卓を囲み、人から美味しい!と褒められる経験を重ねると学校や社会へ戻ろうとする意欲が湧いてくるようです。私たちの所では料理の仕方やそうじなど様々なことを教え、寝食を共にする合宿を行っています。
 将来子どもが何かに挫折し、意欲を失ってしまうようなことがあるかもしれません。あるいは大きな災害が起こり、それを乗り越えなければならない可能性もあるでしょう。子どもの頃から、家の手伝いをたくさんした子ほど、生きる力が備わります。日常の様々なことに気が付き、自分で考え、工夫できるようになった子どもは、たとえ親がいなくなったとしても立派に生きていってくれるでしょう。今回の休校を機会に、日々の子育てを見直し、家のお手伝いをたくさんさせてみませんか!そして自分のことは自分でできるような子に育ててみませんか?
 

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「ネット依存」からの脱却のために
国立赤城青少年交流の家 主任企画指導専門職 梁河 昌彦 氏

 現在「ネット依存」という言葉がよく聞かれ,若者のインターネットの長時間利用による生活習慣の乱れが大きな社会問題となっている。インターネットやゲームが簡単にできるスマートフォン等が普及し,子供たちにとってはとても便利で楽しいものとなっている。つい時間を忘れて夢中になり,いつの間にかハマってしまっているのが現状である。今では誰にでも起こり得る「ネット依存」,どのような対応が必要なのだろうか。
 独立行政法人国立青少年教育振興機構では,平成26年度からネット依存対策推進事業として,ネット依存又はネット依存傾向の青少年を対象に8泊9日の宿泊体験事業「セルフディスカバリーキャンプ」を実施している。この事業のねらいはネット依存状態からの脱却のきっかけづくり,失われた基本的生活習慣の回復,低下したコミュニケーション能力の向上である。特にこのキャンプではスマートフォン等の電子機器は一切持ち込ませないようにしている。期間中ネットから離れ様々な体験活動に取り組むことで,ネット以外にも楽しいことがたくさんあることを実感できる。また,自然体験,社会体験,生活体験などのネットではできない直接体験はもとより,人と人との直接交流ができることが大きなメリットとなる。
 今年度は国立赤城青少年交流の家で実施した。参加者は8泊9日のキャンプを通して大きく成長したように感じた。キャンプ初日の暗い表情が,日がたつにつれて徐々に明るくなり,最終日にはもっとキャンプを続けたいという声もあがったほどであった。ネットを離れ,様々な体験活動に取り組むことは大変効果的であることを痛感した。
 これまでキャンプ等に参加したことがあまりなく,野外での活動に慣れていない子にとっては不安なことも多いかもしれないが,ちょっと勇気を出して一歩踏み出すことで,新たな発見があるかもしれない。スマートフォン等の機器を相手にするのではなく,直接人と交流する活動ができる機会を子供たちに与えることが重要なのではないだろうかと考える。

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思春期の子どもたちと暮らす
特定非営利活動法人セカンドリーグ茨城 理事長 横須賀 聡子 氏

 一般的に9~10歳くらいに思春期に入るといわれています。もちろん個人差のあることですから、一概に4年生=思春期ではありませんが、そろそろ、身体的にも心理的にも大きな変化が起きるころだと知っておくことは必要だと思います。
 さて、思春期は身体的変化が先に来るといわれています。心の準備が整わないところでの身体の変化は、敏感な子どもには大きなストレスになるようです。だからイライラしがちになったり、寡黙になったりもする反面、中学生になっても甘えたり、スキンシップを求めるようなこともあり、親としても理解するのが難しい時期です。そして、そのイライラを安心できる親や家族にぶつけるなど、この時期の子どもたちは嵐のように、周りを巻き込む力がありますが、だからこそ、どちらの問題なのか、誰が何に困っているのかを整理して、親は必要以上に巻き込まれないことも大事なような気がします。
 そんな、思春期の子どもとのかかわりで私が大切にしてきたことの一つは、子どもに恥をかかせない、ということです。友人との会話に割って入られること、他者の前で子ども扱いされることなどをこの時期の子どもたちは嫌うことが多いので、ムキになる姿が可愛くても、からかいはほどほどにした方がいいかもしれません。ひとりの大人として尊重することです。我が家では、あなたももう半分大人だから、あなたを信じて、これをお願いするね、とか、じゃぁ大人のあなたを信じで任せてみるね、とか、そういう会話でコミュニケーションが取れていたように思います。
 しかし、この時期は「アタッチメント(愛着)」の対象が親や家族から友人や恋人に移る時期でもありますから、親よりも他の人の方が子どもの信頼を得られるということも起こります。だからこそ、学校の先生でも親でもない斜めの関係の大人が必要だと私は思っています。以前、信田さよ子先生がおっしゃったように、我が子をお隣のお母さんに見てもらい、自分は別の家の子の面倒を見るような関係が地域社会にあれば、親も子も安心して思春期をやり過ごすことができるのではないでしょうか。
 もうひとつの思春期の課題は、巣立ちの準備を始めるということです。それゆえに自分の所在なさを強く意識するときでもあるように思います。多くの子どもたちが、これからの時期に孤独を感じ、そして、その中の多くの子どもは、何かしらのつながりを確認することで、自己を確立していくのだと思います。しかし、問題や課題をかえる家庭に育つ子どもたちには、それができません。児童精神科医の小澤いぶきさんが、始められた「子ども・若者を孤立させないプロジェクト」は地域の大人が斜めの関係で、子どもに寄り添い、社会との信頼を結び直す試みですが、子どもが思春期を迎えることを機に、我が子のことだけではなく、すべての子どもが大切にされ、私には力があると確認出来て、地域社会の一員として活躍できるような地域のあり方を一緒に考えていきませんか?
 

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わが子が思春期を迎えるとき
茨城県幼稚園・認定こども園連合会会長 水戸市立稲荷第二小学校長 春原 孝政 氏

 「最近,急に言葉遣いや態度が乱暴になってきた」,「学校や友達のことを何でも話してくれたのに,あまり話さなくなった」,「近頃,周りの目をすごく気にするようになった」,「家ではテレビやゲームばかりだ」・・・今までは素直で元気な子供だったのに,小学生4年生ころからのこのような変化に不安や戸惑いを感じている保護者の方も少なくないのではないかと思います。
 小学校高学年ともなると,学校生活も忙しくなります。勉強も難しくなり,クラブや委員会活動,縦割り班活動等では,率先して活動しなくてはなりません。家に帰っても,学校の宿題や塾,習い事などスケジュールがびっしり詰まっています。子供たちが「疲れた」と口にするのは,本当に疲れているからなのかもしれません。
 また,小学校高学年になると,子供は急速に成長してきます。心も体も大きく変化してくる時期を迎えます。体は大人に近づいてくる一方,心はそれに追いつかないため,不機嫌だったりイライラしたりして,心身ともに不安定になってきます。心の変化では,お父さんやお母さんとの関係から,学校や友達,インターネットやテレビ等のメディアといった外の社会との関係が強くなってきます。そして,この時期の子供たちは,言葉で気持ちをうまく伝えることが不得手です。「大人になんか分かってたまるか」,「大人には分かってもらえない」,「親に心配かけたくない」・・・の思いから,自分の思いを素直に言葉にしてくれない時期でもあります。時には,言葉に出せない悩みやストレスなど,心にたまったモヤモヤから物や人に当たったり,頭痛や腹痛など体調が不安定になったりしがちな場面も見られるかもしれません。
 子供としても,好きでイライラしているわけではありません。思春期は,子供の成長や将来の自立のためにとても大切な時期です。いろいろ大変な時期なんだなと親が分かっているだけで,対応も随分変わってくるのではないかと思います。保護者の方々には是非,言葉だけで判断せず,日々の生活の中でお子さんの表情や様子をよく観察して,つぶやきに耳を傾け,さりげなく見守ってほしいと思っています。そして,友達と比較して,自分の実力のなさを実感してしまい自信をなくしたり,自尊心が低下したりしやすい時期なので,お子さんが得意なことや,頑張っていることを一つでも見付けて声をかけ,認めてあげてほしいと思います。
 子供たちは,親子関係,友達との関係,先生との関係・・・と,さまざまな人間関係の中で生き方を学び成長していきます。そして,様々な人間関係の中でも特に親子関係は大切なものだと感じています。それは,親子関係はすべての人間関係のスタートになるものだからです。子育てに百点満点の正解はないと思います。親は子供の一番身近にいて,大きな愛情で包み,見守ってあげる存在であってほしいと願っています。
 

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子どもの可能性を伸ばす
特定非営利活動法人ひと・まちねっとわーく 理事長 池田 馨 氏

 子どもは10歳頃から知性が急速に発達し、人生や自然、社会現象などに対し好奇心や興味を示すようになります。このような時期にいかに自然体験や多くの人との触れ合い、物事に対する考え方や感動する場面との遭遇などをいかに多く持てるかです。
 また、小学校高学年から中学に入る時期、子どもの心と体には大きな変化が起こり、自身と向き合い始めます。そのような時期に様々な体験をすることにより物の見方や考え方、新しい友人関係の構築やコミュニケーション能力の獲得、自分の将来に対する思いなど多くのことを学ぶ必要があります。
 このような学ぶ場面との出会いは自然発生的なものもあるでしょうし、子ども本人の考えや気づき、興味・関心等のほか、親や大人が意図的に家庭や地域社会の様々な場での環境づくりをすることによって出会うこともあります。また、毎日何気なく生活している学校生活(登下校も含めて)の中での体験や授業での学習の場で得ることもあるでしょう。
 このように、気にかけて注目していると、子どもの周りには子どもが興味・関心を引くような場面や出会いがたくさんあります。肝心なのは、それらの機会に子どもがいかに多く出会えるかです。周りの大人も気に掛けてあげることも必要です。
 例を挙げれば、茨城県教育委員会が主催している「いばらき子ども大学」という事業があります。子どもたちの好奇心や疑問に応え、知的な世界を開くため、大学や様々な施設で大学の先生や各分野の専門家が自分の豊富な専門的知識を駆使し、テーマについて分かりやすくかつ体系的に教え、子どもの知的好奇心を満足させるとともに、子どもたちはその「学び」を通して総合的な知識を獲得し、想像力を豊かに育み、夢と希望を抱き、新しい未来社会を構築する力を蓄えるものです。小学4年生から6年生を対象に天体や宇宙、ロボット、芸術、医療、文化、生物、国際問題など子どもが興味を示しそうなあらゆる分野の専門家が90分の授業を実施するというものです。学校では習わない様々な内容を体験したり学ぶことによって将来の自分の職業へのヒントを得たり、長く楽しめるような趣味を見つけたりできるかもしれません。
 この他、県や市町村、地域社会や青少年教育施設、図書館、公民館、美術館、博物館、つくばにある国の専門機関、企業や団体などが実施する子ども対象や親子で経験できる事業がたくさん開催されています。
 ぜひ、子どもの興味・関心や知的好奇心を少しでも満たすため、また、様々な体験や出会いをすることによって物の見方や考え方など様々な能力や可能性を伸ばすことへの挑戦をさせてみてはいかがでしょうか。
 

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一つの指針をもたせること
茨城県国公立幼稚園・こども園長会会長 水戸市立妻里小学校校長 橋 義孝 氏

 小学校高学年は,中学生になることを意識しながら大きく成長する時期である。また,思春期を迎え,精神的な不安定や難しさが出る時期でもある。私は,幼稚園や小・中学校,児童自立支援施設等の勤務を通して,このような時期に最も大切なことは,親や教師(大人)が,片方ではこう言い,もう片方では別なことを言うなど,二つ以上の矛盾を含んだメッセージを与えない(ダブルバインドにならない)ことだと思っている。小学校高学年になると,社会に対しての見方が育つ時期になる。異なるメッセージを受け取った児童は混乱し,信頼という感覚が薄れていくことが多いからだ。一時的かもしれないが,家庭や学校での反抗が強くなり,自分の良さを見失うことにもつながる。
 やはり子どもにとって大人は,大きな影響をもつ存在である。そして,親や教師は,子どもにとって,一番身近な大人である。ニュースなどで飛び込んでくる悲惨で短絡的な事件事故を,自分の身近な大人は決して引き起こさないと信じているのが子どもだと思う。だから,自分の身近な大人のメッセージが歪んでしまうことは,彼らの成長に大きく影響することだと考える。
 では,どうすればよいか。私は,子どもたちがどんな時でも信じられる指針をもたせてあげることが有効ではないかと考えている。特に小学校高学年になって,批判的な考えももちはじめる時期には大切なことになる。その指針は,たった一つでいい。(たくさんあったら、大人が大変になる。)例えば,月並みかもしれないが,「嘘だけはつくな。」と言い続けること。もちろん大人もそれを守らなければならない。一つの指針をもつ子どもは強いと思う。自分らしく生きることにもつながる。
 茨城県では,現在,就学前教育・家庭教育推進室が,「茨城県就学前教育・家庭教育推進アクションプラン」を示し,質の高い幼児教育の実現を目指している。さらに,学びの連続性を重要視し,幼稚園や保育所と小学校の接続を推進している。私が勤務している幼稚園や小学校でも,小学校の教育課程に園児との関わりを取り入れた授業や行事を行っているところだ。そんな中で,前述した「一つの指針」を始める時期は,実は幼稚園時代から始めてもいいと思っている。幼児教育は,生涯にわたる人格形成に大きな影響をもっていると言われているからだ。このことは,是非,家庭教育と連携しながら進めていきたい。本校では,PTA本部が中心となって「家庭教育を高めるための六策」を決め,家庭の協力を得ながら,学校と家庭の双方向から児童のよりよい成長のために取り組んでいる。次年度は,幼稚園版を作成し,幼稚園の家庭教育にも取り組みたいと考えている。
 本校には,よく食べよく笑い,気持ちの優しい児童がたくさんいる。保護者に聞いてみると,「幼稚園ぐらいからこんな感じでした。」と言っていた。幼稚園の年長の後半に,園児は大きく成長する。その成長は,小学校高学年の生活を支える基盤にもなっていることは間違いない。子どもが生き生きと生活できるように,生きるために必要な「一つの指針」について考えてみることをお勧めしたい。

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~日本の宝物「童謡」誕生100年~
県北生涯学習センター センター長 野口 不二子 氏

 童謡という言葉が生まれて今年で100年になります。1918年(大正7年)に鈴木三重吉によって児童文学雑誌「赤い鳥」が創刊されました。その中に,子どもの純粋性を育む良い作品として,芥川龍之介の「蜘蛛の糸」「杜子春」,有馬武郎の「一房の葡萄」,新実南吉の「ごん狐」など,今でも名作として愛読されている児童文学があります。
 野口雨情(1882~1945年)は,「赤い鳥」の創刊より1年遅れて,1919年(大正8年)に創刊の「金の船」や,その後創刊される「コドモノクニ」といった児童雑誌から2200余の童謡を発表しています。また,北原白秋,三木露風,西条八十とともに童謡普及運動を展開していきました。童謡普及運動とは,従来お伽話しかなかった児童向けのお話を児童の「文学」として高め確立させる端緒を開きました。そして,知識習得の手段として,子どもの感情を無視した歌詞をつけた明治以降の唱歌の在り方に異論を唱え,一つの芸術として「童謡」を生み出しました。おそらく「童謡」という言葉は世界に類がないでしょう。
 雨情は「『童心』の詩人」と言われ,その神髄は「童心」の発露にあります。
 「童心」とは,決して子どもばかりでなく,青年も大人も老人も持つべき人間の心の宝であると雨情は力説しました。「天与童心」という語彙を残しており,それは,人は生まれたとき誰にも平等に「天から童心が与えられる」と言っています。この心の働きは,お互いに花を見て,また太陽を見て美しいと感じる心,自然の恵みに対して無条件にありがたいと感じる素直な心の意味です。
 「童心」すなわち,永遠の児童性であり,時代や生活環境が変わっても変わることのない思想感情のことと言えるでしょう。童心なくしては童謡の宿り木はないと言い切っているのです。
平成18年(2006年)9月~11月に「日本の歌百選」と題して,文化庁と㈳日本PTA全国協議会は,後世に歌い継ぐべき歌を国民の皆さんに選んでいただこうと募集をしました。「歌は,日本語の歌詞であれば,ジャンルを問わず,家族で歌うのに適していると思われる歌,子どもや孫にも歌ってあげたい歌,日本の伝統文化として次世代に残したい歌,親から子,子から孫へ。~親子で歌いつごう『日本の歌百選』を募集します。」という趣旨です。
『日本の歌百選』に選ばれた曲名五十音順の十番目までの曲名と作詞家を紹介します。
① 仰げば尊し       不   詳
② 赤い靴         野口 雨情
③ 赤とんぼ        三木 露風
④ 朝はどこから      森 まさる
⑤ あの町この町      野口 雨情
⑥ あめふり        北原 白秋
⑦ 雨振りお月       野口 雨情
⑧ あめふりくまのこ    鶴見 正夫
⑨ いい日旅立ち      谷村 新司
⑩ いつでも夢を      佐伯 孝夫
 なんと,その中に野口雨情の童謡が3つも選ばれています。その他に「シャボン玉」「七つの子」なども選ばれています。
 雨情が生前よく言っていた言葉があります。
「書いた人の名前が忘れられても,その童謡が百年も二百年も歌い継がれていったとき,初めてその作品が本物になるのです。」
 雨情はともかく皆様に,100年近く今日まで歌い続けていただけたことに,高い所から「うん,うん」とうなずいているのではないでしょうか。

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安心安全なインターネットの利用【パート1】
茨城県メディア教育指導員連絡会 会長 堤 千賀子 氏

 スマホを買ってほしいと子どもに言われていませんか?小学校の高学年になるとスマートフォン(以下スマホ)の所有率が一気に上がります。いつ、どのタイミングで子どもに買い与えたらいいでしょうか。子どもの判断力を考えて与えましょうと言われても、簡単に判断できることではありませんね。たぶん子どもからお友達がどのくらい持っているのかを聞いて判断する保護者が多いと思いますが、それだけで良いでしょうか。
 多くの保護者が防犯の目的や子どもとの連絡手段として購入を考えますが、子どもたちはそれ以外のサービスを使うことが目的です。スマホは携帯できる電話ではなく、インターネットにつながる小型の携帯できるパソコン。親の世代が使っていたケータイとはまったく別のものだと思わなくてはいけません。スマホは機能もサービスも進んで便利になっている反面、詐欺、いじめ、個人情報の流出、依存と様々な問題を抱えています。スマホを何の準備もなく買い与えてしまっては、巨大で複雑なインターネットの世界にいきなり子どもを放り込んでしまうことになってしまいます。どのタイミングで購入するか、まず何をしたらいいかを考えてみましょう。
 子どもに「スマホを買ってほしい」と言われたら、「どうして欲しいのか」と聞いてみましょう。「○○ちゃんが持っているから」「みんなが持っているから」では心許ないですね。こういうことをしたいから…と具体的な希望がない場合は必要がない、購入はまだ早いと考えるべきです。スマホはおもちゃではありません。ご褒美やご機嫌取りに与えるのは禁物です。使い方によっては危険なことも多いのですから、購入を急ぐことはないでしょう。また、保護者側に子どもに持たせる理由がある場合には、その目的以外では使用させない設定をすること(インターネットにつながない等)や目的にあった機種を選びましょう。

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安心安全なインターネットの利用【パート2】
茨城県メディア教育指導員連絡会 会長 堤 千賀子 氏

 そろそろ購入を考えてあげる目安となるのは「SNSがしたい、ゲームがしたい、動画が見たい…」と具体的な返事が返ってきたらということになります。
 まずは、保護者がスマホ・インターネットとはどんなものなのか(特性)、子どもの利用に関してどんな問題があるのかを知っておくことが肝心です。そろそろ欲しがりそうだな…と思ったら心がけておきましょう。
 自分が大丈夫だったから…ウチの子は大丈夫!ではだめ。子どものことに関しては、いつでも想定外があることを忘れてはいけません。パソコンで検索してみたり、携帯電話会社の窓口のリーフレットを読んでみたりすることを勧めます。学校で催される研修にも参加するといいですね。
 ①今、何が起こっているのかを知ることが大切。
 ②使いたいサービスがどんなものなのか、何に注意したらいいのかを子どもと一緒に調べてみましょう。
 ③実際に使ってみるものいいですね。そこから約束につながるヒントが見つかるでしょうから。

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安心安全なインターネットの利用【パート3】
茨城県メディア教育指導員連絡会 会長 堤 千賀子 氏

 子どもとスマホの利用目的について話し合うことも大切です。スマホは買ってあげるのではなく、親が貸し与えるというのだということをしっかり分かってもらうために子どもと話し合います。

 ①「何のために貸してあげるのか、どう使ってほしいのか」を伝え、使用時間等の約束も決めましょう。
  作った約束はできるだけお友達にも伝えて、約束を守れる環境を整えてあげましょう。
 ②生活リズムを守るための項目を入れることや約束を守れなかったときのペナルティーも決めましょう。
 ③何よりも、何かあった時には必ず大人に相談するということを約束させましょう。

 本来はここまでを購入する前にすることが理想ですが、いつでも遅くはありません。持たせてしまった後でも子どもと話し合ってくださいね。
 また、保護者はフィルタリング(有害情報から守るための機能)を使用して子どものインターネット利用を指導、監督しなければならないことが法律(青少年インターネット環境整備法)で決められています(保護者が不要の申し出をしない限り)。最低限の親の目の代わりをする機能ですから、フィルタリングは必ず使用してください。
 インターネットの情報の中には、デマや詐欺、他人に対する誹謗中傷などが溢れています。SNS(LINE・Twitter等)での文字による会話の誤解やいじめによるトラブルも深刻です。機械を使いこなすことには長けていても、判断力や自制心などが未熟な子どもたちは思いもよらない結果を招いてしまうことがあるのです。自分の子どもに、今、本当に必要なものかどうかを考えて安易に購入せずに子どもと一緒に準備を進めてみましょう。

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子どもに良書を手渡すために【パート1】
絵本専門士,学校図書館司書 おはなしの会ぱたぽん会員 石川 仁美 氏

 「以前はたくさん本を読んでいたのに,4年生になったら急に読まなくなって…。」
こんな言葉があちこちで聞かれるようですが,そのわりに高学年の子どもたちに,
「本を読むのは好きですか。」
という質問をしてみると,8割の子どもが,
「本を読むのは好き。昨日は○○という本を読んだよ。」と答えてくれます。なかには,
「うーん,あんまり好きじゃないかも。サッカーのほうが好き。あ,でもサッカー関係の本は読みたい。」
と正直な答えが返ってくることもあります。
 
 個人差はありますが,一般的に子どもは小学校4年生ぐらいから自発的に,自分の目的にあった読書をするようになります。また,自分が読んだ本の内容に対して批判することもできるようになります。さらに,目的に応じて本を自分で選ぶことができるようになり,よりたくさんの本を読もうとするようになります。小学校高学年では,今まで読んでいた簡単な童話を卒業して,より込み入った筋立ての児童文学も読むようになります。しかし,この時期の子どもはまだまだ人生経験も浅く,偏った読書嗜好におちいりやすいことを考えると,大人のアドバイスは重要だといえます。
 たとえば,自分と同年代の子どもが複数で登場し,困難を勇気と知恵や友情で解決しようとする物語は,読書という疑似体験を通して現実世界での困難を整理し,克服するための想像力や力を育む助けとなっていくでしょう。このような物語は世界名作といわれる作品の大部分を占めています。名作文学ときくと,いささか気後れしてしまいますが,実は国際的に認められ,子どもの本として永く読まれてきている作品であり,時代時代で子どもたちの支持を受けてきた作品だということを示しています。昔から知られているだけに,現代の子どもは古くさいと感じてしまうのではと考えがちですが,実際には,子どもたちは読み始めるとその作品の力を感じ,想像力を刺激され思う存分にその作品を楽しむことになります。また,国際的な賞を受賞した作品を選び,子どもと一緒に読んでみることは,子どもにとっての良い本を理解するひとつの方法です。

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子どもに良書を手渡すために【パート2】
絵本専門士,学校図書館司書 おはなしの会ぱたぽん会員 石川 仁美 氏

 できれば,図書館や教育機関の作成しているブックリストを参考にして,少年少女物語のみならず,定評のあるファンタジー,歴史物語,科学読み物,絵本と幅広く紹介することがよいでしょう。いちいちジャンル毎に題名を挙げることはしませんが,一つの目安としては,大人である自分が子どもの時に薦められた作品で,今も図書館,本のリストや書店の棚にある本は,子どもたちに永く愛されてきた作品であり,現在でも子ども自身が楽しめる本だといえます。昨今の流行に乗った作品は,その内容はもとより文学性についてもきちんと吟味した上で選びたいところです。
 また,子ども自身の興味がどこに向いているかを知って,興味に合った作品を探し出し,手渡すことは,読書の可能性の大きさを子どもに実感させることになるでしょう。
 
 結局のところ,小学校高学年の子どものために本を選ぶことは,大人である私たちがかつて逃してしまった子どもの頃の楽しみを再確認し再び取り戻すことに他ならないことなのです。
 子どものために本を選ぼうとしている大人のあなたに,あえて質問しましょう。
「あなたは本を読むのは好きですか」
「あなたは本を読むのが楽しいですか」
 あなたは,なんと答えるのでしょうか。

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整理整頓のすすめ【パート1】
茨城キリスト教大学 教授 飛田 隆 氏

 小学校4年生ぐらいから自分の身の回りのことは自分でするということを意識させていくことは大切だと思います。子ども部屋があれば、その部屋の整理整頓になるのかと思います。
 しかしながら、初めのうちはできることから親と一緒に取り組むことが必要です。この時に大切なことは子どもがうまく整理できなくとも叱らないことと、整理整頓をする場所を限定することが重要です。
 はじめのうちは、おおざっぱな片づけに努めるということです。そのうえで勉強机については整理整頓に努め、子どもと一緒に片づける物の分類をしっかり決めることは大切です。この時のコツは勉強机には遊ぶ道具になるようなものはおかないことが重要です。こうすることで勉強に取り組むときに妨げになるものが目につかなくなりますので勉強に集中できることにつながります。
 勉強机で使用する物を分類し、しまう場所が確定しましたら、出したものはかならず元の位置にしまう習慣を付けさせることが大切です。この時も、叱るのではなくできた時にほめることで長続きします。

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整理整頓のすすめ【パート2】
茨城キリスト教大学 教授 飛田 隆 氏

 勉強に集中できない子の多くは、勉強しようと思ってはじめて必要に応じて、何か調べようと思って辞書等を探しても見つからず、その途中で遊び道具を見つけては遊んでしまったりして、長続きしなくなってしまうことも考えられます。
 整理整頓のできていない子は探し物をいつもしていて、その時間を使うことで本来のことができずに、時間に追われていることもあります。また探しているときに本来の探し物でなく、自分の趣味のものや懐かしいものを見つけたりすると、そちらに注意が向き、そこでもまた時間を取るようになり、ますます本来のするべきことができずに遅れていくことにつながりますので、保護者の皆様は注意していただくことが大切だと思います。
 勉強机の管理、整理整頓ができるようになりましたら、次はその周りの片づけをしっかりできるようにしてみてください。そこまでできるようになると綺麗になっていることが当たり前になり、散らかったり汚れたりすると自分から掃除をしたり、片づけたりするようになります。
 子どもに整理整頓や片付けの必要性を伝えるときに大切なことは、私たち大人もそうできているかも問われることになります。時間がない、忙しいは言い訳にはなりませんので、できることから始めてみましょう。

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千尋の“ゆらぎ”が“つよさ”に変わるとき
国立青少年教育振興機構 指導主幹 北見 靖直 氏

「“ゆらぎ”がきっかけで宇宙が誕生した」物理学者の佐治晴夫先生が言われているのをある雑誌で読みました。その中で先生は「自然現象のすべては“f分の1”のゆらぎによってゆらいでいる」、「自分という言葉は自然の“自”と分身の“分”だから、人も自然の分身、つまり人は宇宙のひとかけらである」、そして「人も日常と離れた非日常との“ゆらぎ”が必要である」と語られていました。先生の指摘するこのゆらぎこそ子供たちを成長させていく重要なキーワードであると思います。ここに日常を離れた非日常の中でドラマを繰り広げる体験活動の魅力があり、その力こそが子供たちの“つよさ”を引き出していくのです。
 宮崎駿監督の映画「千と千尋の神隠し」はまさに“ゆらぎ”の大切さとともに、その中で“つよさ”を引き出していく大切な魔法を私たちに教えてくれています。まさに体験活動の重要なテキストであると私は思っています。ご存じの方も多いと思いますが、このストーリーは住み慣れた町を離れ転校することになった千尋はまるで元気もやる気も失っています。その千尋が豚になってしまった両親と離れ、ひとりで八百万の神々が客として集う湯屋に迷い込みます。そこで謎の少年ハクと出会い、さまざまな事件や経験、そして多くの出会いのなかで生きる強さを取り戻す千尋。ラストシーンでは両親とともに人間の世界に戻る千尋の目はらんらんと輝いているというお話です。
この映画の中で千尋の“ゆらぎ”を“つよさ”に変えていくシーンがいくつも展開されていきます。その中で私がもっとも好きなシーンは湯屋へ向かう橋を渡り終わった後のシーンです。ハクに言われて息を止めていた千尋は蛙が飛び出し思わず息をしてしまいます。人間であることがばれてしまった後に、二人で裏木戸から湯屋の庭に飛び込みます。そこで「ハク、ごめん、わたし失敗しちゃった」と謝る千尋にハクはこう言います。「千尋は十分がんばった!」と言うのです。この一言が魔法のように千尋の不安を一瞬に勇気に変え、千尋はハクの教わったクモじいのもとに走るのです。まさに結果や成果ではなく、がんばったそのプロセスを肯定したのです。素敵な魔法です。このフィードバックこそが子供達の本来持っているちからを引き出していく。体験活動をともにする大人の存在と役割の大切さを私たちに教えてくれています。
子供たちの持つ生き抜く力を育むことがいま大切になっています。そのために子供たちに非日常への“ゆらぎ”の機会と、その中で子供達に寄り添う一言を私たち大人がプレゼントできたらと思います。

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「体験」が子供の力になる
つくば市教育委員 鷲田 美加 氏

小学校の後半ぐらいから,子供は急速に成長していきます。その成長ぶりに感動したり,子供の心と体の大きな変化に戸惑ったりもしますが,子供に幸せになってほしい,というのが親の願いです。
現代の子供たちは,スマホや携帯電話がある生活をしているので,たくさんの情報を得たり,ネットで繋がりを構築することができます。しかし一方で,自然との関わりや生活体験の機会が少なくなっていると言われています。この「実際の体験」こそが,子供たちの成長に欠かせない,大切なものです。

 「自然体験」
 子供の頃の「自然体験」が豊富な人ほど,大人になってから「人間関係能力」が高い人が多い,という調査結果が出ています。
 幸い,私たちの住む茨城県には,豊富な自然があります。少し外に出かけるだけで,山を歩いたり,海や川や湖で遊んだり,魚を釣ったりできるのは,茨城県に住んでいる大きなメリットですね。ぜひ親子で自然体験の共有をしたいものです。また,
・外に出て,夜空の星を見る
・太陽が昇るところや沈むところを見る
・道草を食う
など,意識すれば身近なところにも体験のチャンスはありそうです。

 「社会体験」
 子供の頃の「友達との遊び」「地域活動」の体験が豊富な人ほど,大人になってからの「規範意識」「意欲・関心」が高い人が多いという調査結果が出ています。何より,一番身近にいる社会人として,
・子供に仕事の話をする
・職場に連れて行く
など,意識して親の背中を見せることは,子供にとって素晴らしい社会体験になりますね。
 以前,保育士の資格を取得した際,私がリビングで勉強をしていたら,子供たちも横に座り,おもむろにノートを広げて勉強を始めたのです。「勉強しなさい」なんて一言も言って行っていないのに。子供は,親の背中をよく見ているのだなあ!と驚きました。
子どもは様々な体験を通して,自立するための力を身につけていきます。今の体験が,未来の子供の力になると信じて,親子で体験を増やしていきたいですね。

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