3~6歳の子をもつ保護者の皆様へ

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五感をはぐくむ食を親子で体験しよう
野菜ソムリエプロ/フードコーディネーター 田野島 万由子 氏

 みなさん、「食育」について聞かれたら答えられますか?
 2005年に施行された食育基本法の中で、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとされ、食育は生涯に渡り推進されているものです。
 人は生まれたときから食育が始まっています。大人になっても食べることを通じた学びなどの体験は一生涯得られるものです。最新の研究では味を感じるセンサーについても解明が進み、味覚の形成(発達)には乳幼児期が大切であるとか、乳幼児期に食べるもので腸内フローラ、その性格的なものが決まってくるとか、最近は興味深い食と健康の話題も豊富です。
 一例として、今回は「おいしさ」とは何か?ということに触れてみようと思います。
ここでまず“五感”です。味覚では、基本5味と言われる、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの味を舌のセンサーが感じていて、辛いや渋いといった刺激も含めて脳にその味わいを伝えています。
 ですが、「おいしさ」は、味覚だけでわかるのでしょうか?食べるときには、五感の味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚と、それぞれの感覚が見た目、香り、味わい、温度や食感、音などを感じています。
 実は、最も比重の大きい感覚は「視覚」です。私たちは目から入る情報と経験とを、脳で整理して、その「おいしさ」をイメージしています。食卓に並ぶ料理を見て、もしくはテレビのグルメ番組を見ただけで「おいしそう!」と思うのはそのためです。
 嗅覚や聴覚も同様に、過去の記憶をたどり、食べる前から判別しているのです。まだ食べていないのに不思議ですね。
鼻をつまんでキャンディを舐めてみたり、目を閉じて誰かに食べ物を口に入れてもらってみてください、私たちがいかに情報(記憶)で食べているのかがわかります。
 日本人は特に季節感を大事にし、器を選び、五感をフルに使って食を楽しむ感性に優れています。逆に言えば、食で豊かな経験値をはぐくむことができたら、それは感性を育てるということでもあります。
 実践するにあたり、何も難しいことはありません。ぜひ普段の食事の時間に、お料理や食材の話をしたり、コミュニケーションを楽しんでくださいね。

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幼児期から児童期へ【パート1】
公益社団法人全国幼児教育研究協会茨城支部参与 福田 洋子 氏

【パート1】
 小学校入学については、子供も親も期待とともに不安も大きいのではないかと思います。
しかし、現在、幼児教育と小学校教育の滑らかな接続、幼保小接続・連携については、文部科学省をはじめ全国的に重要事項とされ、各学校園や行政では努力を重ね続けているところです。これらは、長い間課題となって取り組まれ、幼児教育関係者と小学校教育関係者、行政の方々が一堂に会して協議をして、カリキュラムを検討したり作成したりしてきました。アプローチカリキュラムやスタートカリキュラムの検討や実施がされてきました。現在、5歳児と小学校1年生の2年間を「架け橋期」と呼び、「架け橋プログラム」の検討が全国的に行われているところです。
 
 教育・保育の基本や指針は、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、学習指導要領などの中で示されています。現在使われているものは、幼児期から18歳までを貫いて考えられています。幼児期を大切にするとともに18歳まで、どのように育っていくことが求められるのかが示されています。それらを基に、各幼児教育関係者や小学校の先生方が滑らかな接続のために努力をしているところです。
 その中では、幼児教育は、小学校教育の前倒しではないことが大切とされています。幼児期にふさわしい生活と教育の中で進めていくことが重要です。小学校で行うことを先取りするのではないことが言われています。幼児期には幼児期のうちに大切に培っていくことが沢山あります。幼児期は、「生涯にわたる人格形成の基礎」だからです。

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幼児期から児童期へ【パート2】
公益社団法人全国幼児教育研究協会茨城支部参与 福田 洋子 氏

【パート2】
 では、幼児期に特に大切にしたいことは何でしょうか。次にいくつかを少し示してみます。
〇 健康(心身共に)
 とにかく健康第一です。健康はすぐにはつくれません。幼児期の一日一日の生活のリズム、基本的生活習慣が大切です。(早寝・早起き、睡眠、食事、排泄、清潔、その他)
 幼児期の運動については、文部科学省から「幼児期運動指針」が示されていて、散歩や手伝いなども含めて一日60分は運動をすることが必要とされています。遊びなど楽しみながら体を十分に動かすことが大切です。
 また、幼児が安定感、安心感をもつことが重要です。それには、まず親など幼児の周りの大人が安定することが大切になります。
〇 安全
 小学校に通うようになると、自分で判断をしながら登校するようになります。保護者の方々は、交通安全を常に意識し、登下校の方法やルート、危険箇所はないか、不審者に遭遇したらどうするのかなど、確認しておくことが大切です。幼児期のうちから、できるだけ同じルートを同じ方法(バス、徒歩など)で大人と練習をし、十分に慣れておくことが重要です。大人と手をつないでいても、横断歩道を渡る時は、注意点を守りながら自分の判断で渡れるように練習しておくことが大切です。注意点の中では、例えば、青信号は、「進め」ではなく、「進むことができる」です。右折車など走ってくることがありますから、自分の目で、右・左・右を確認して横断歩道を安全に渡ることを習慣にすることが重要です。習慣にするまでには、長い期間が必要です。
 その他、乳幼児期に培っておく大切なことは、沢山あります。
〇 自主性、主体性(自ら考え、行動していく)(自己発揮を大切に、遊びを十分に)
〇 自律性、自己コントロール
〇 人の話をよく聞く力(大人は、子供の話を真剣によく聞くことが大切です)
〇 積極性、集中力(楽しいことに没頭する姿を大切に)
〇 協同性
〇 思考力、試行錯誤、好奇心(夢中になって遊ぶ中で)
〇 思いやり
〇 その他
 
 家庭の中で愛情いっぱいに育った子供たちは、自ら児童期へと豊かに成長していくことでしょう。育つ力を大人が支えていきましょう。分からないことがあれば、一人で抱え込まずに、幼児教育関係者や小学校の先生方、保護者の先輩方、地域の方々、友人などに相談することが大切です。きっと答えが見つかります。失敗しても命以外であれば、やり直せばいいのです。幼児期に子供たちの人生の「根っこ」の部分をしっかり培っていきましょう。
 <参考> 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」:(1)健康な心と体 (2)自立心 (3)協同性 (4) 道徳性・規範意識の芽生え (5) 社会生活との関わり (6) 思考力の芽生え (7) 自然との関わり・生命尊重 (8)数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 (9)言葉による伝え合い (10)豊かな感性と表現

幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、学習指導要領より
 

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幼児期の子どもたちと、共に生きる
茨城県国公立幼稚園・こども園長会会長(水戸市立吉田が丘幼稚園長) 平 宗子 氏

 木漏れ日・水滴の光・風の音・流れる雲・草花の香り・虫の声・鳥のはばたき・夕焼け・星空。幼児期の子どもたちと一緒に生活することで、世界の美しさをまるで初めてかのように再発見し味わえることは、幸せなことです。花が咲いた、虫が飛んだ、と瞳を輝かせる子どもたちは、日々少しずつ少しずつ自分の世界を広げていきます。そして、友達と遊び、関わることで「友達は自分とは違う」ということに気付きながら関係をつくっていきます。
 子どもたちの日々は順風満帆ではありません。新しい体験に葛藤したり、友達と折り合いを付けられず一緒に遊べないことがあったりします。保護者の方も、戸惑う我が子の姿を見て「こんな親でよいのだろうか」と思い悩むこともあるでしょう。保育者も同じです。子どもたちの発達の道筋を踏まえて援助していても、「他の方法があったのでは」「あのタイミングで声を掛けていたら」、また「保護者の方の言いたかったことをきちんと受け止められただろうか」と反省と次の日への挑戦の繰り返しです。
 しかしそのような日々の中で、子どもたちの成長に接し心揺さぶられる嬉しい瞬間にたくさん出会います。遊びを見ていた子が初めて「入れて」と言ったとき。友達同士で「ごめんね」と仲直りしているとき。長い間練習してきた縄跳びができたとき。リレーで転んでも立ち上がって最後まで全力で走っているとき。そして、このような成長を保護者の方と共に喜び、子どもたちの笑顔を見ることは、保育者として日々を一緒に過ごせることへの感謝につながっていきます。
 インターネット上ではなく、生身の人と人とが関係をゆっくりと育んでいく幼児期。かけがえのないこの時期を共に生きることで、大人にも忘れていた感性を取り戻して成長する機会が与えられているのではないかと思います。悩んだときには、通っている保育施設にご相談ください。すぐに答えがでなくても、一緒に考えていきましょう。

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幼児のよさを引き出す関わり方
茨城県幼稚園・こども園長会長 水戸市立吉田小学校長 井坂 眞理子 氏

 3歳から6歳、とくに小学校に入学する年長の時期、保護者の皆様は入学に向け不安や心配をたくさん抱えていることでしょう。身の回りのことを自分でできるようにすることや、読み書きを教えるなど、やることはたくさんありそうですね。これらのことは大切ではありますが、今回は、違う目から見た大切なことをお話ししましょう。

1 我が子をありのまま受け入れる
  我が子を自分の思い描く子に育てようとがんばりすぎていませんか?子供は個人の人格をもち、個性も持ち合わせていま 
 す。保護者の思い通りにならなくて当たり前と思いましょう。そして、もし我が子が悪いことをしたり、言うことを聞かなか
 ったりしても、まずは受け入れ、その上で行動を見直させましょう。子供を愛するということは、無条件でその子のすべてを 
 受け入れるということです。「悪いことをするから我が子がきらい」ではなく、悪いことの行動は叱っても、わが子自身は否
 定せず、「今のあなたが大好き」とぎゅっと抱きしめられるといいですね。そうすれば、子供も少しずつ自信をもち、安心し
 て自分らしさを表現できるようになります。

2 自然に興味をもたせ、たくさんの経験をさせる
  この時期は好奇心旺盛で、五感をフル回転させて、知的好奇心を広げている時期です。この時期に、ぜひ、外に出て自然を
 肌いっぱいに感じさせてください、そして、自然の不思議さを思う感性を大切に育ててください。感じることが知的好奇心で
 あり、好奇心こそが人が動く原動力なのだと考えます。そうして、我が子がやりたいことをたくさんさせてあげてください。
 もちろん、失敗は想定内で。危ないからとか、失敗したらかわいそうという理由で、やらせないことは、その子のよさを摘み
 取ってしまうこともあります。

 保護者にとって欠点にみえるところも、違う方向から見れば長所にもなります。どうぞ、いろいろな方向から我が子を見てください。そして、その子のよさがわかる一番の理解者はやはり保護者でありたいですね。子育てはあっという間に終わってしまいます。子育てを楽しみ、彩ある人生を保護者自身が歩むことこそが、子供のよさを引き出す源です。
 

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ちょっとの背伸びが成長に
茨城県国公立幼稚園・こども園長会 会長 近重 敦子 氏

 今年度より、小学校長と幼稚園長を兼務しています。先日、幼稚園年長児が小学校へ来て1年生との交流会を行いました。普段幼稚園で元気いっぱいの子供たちがちょっと緊張(ガチガチに緊張)して教室の椅子に座っています。歌ったりゲームをしたり楽しい時間を過ごしました。
 会が終わって教室から出てきた顔は、まだこわばっています。でも、昇降口から外に出たとたん、「楽しかった。」、「早く1年生になりたいな。」、「おみやげもらった。」、「質問できた。」と大はしゃぎする子供たち。その会話には、ちょっと背伸びをして、小学校で1年生と一緒に過ごせた満足感と達成感が感じられました。
 小学校入学を控えて、いろいろなことに不安を感じている保護者もいらっしゃるかもしれません。全く心配ありません。大人が思っているよりはるかに子供は成長しています。この時期ちょっと背伸びをしたくなる子供たち。背伸びをしたことで失敗をするかもしれません。でも、それこそが大きな成長につながります。「すごいね。」、「がんばっているね。」とたくさん誉めてあげてください。
 さて、交流会が終わって、年長児が年少児や担任に自慢をしています。「小学生の座り方はかっこいいんだよ。」、「給食は自分たちで配るんだよ。」、「小学校は広くて迷子になっちゃうかもよ。」、「ペットボトルと松ぼっくりでけん玉が作れるんだよ。」どの顔も自信たっぷりです。きっと、家庭でもたくさんの自慢話をしたことでしょう。
 「この子にはまだ無理。」、「心配だからやめよう。」と子供の行動を制限せず、ちょっとの背伸びをどんどんさせて、自信と成長につなげましょう。そして、そのとき大人も一緒に成長します。

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発達に凸凹がある子どもを育てる秘訣
筑波大学 医学医療系 准教授 水野 智美 氏

 私は、幼稚園、保育所等を訪問し、保育者から子どもたちに関する相談に応じる活動をしています。その中で、発達に凸凹がある子どもが非常に多くいることを実感しています。文部科学省が調査した結果では、小学校1年生の約10人に1人に凸凹があると言われていますが、幼児期にはそれ以上の割合でいます。私も凸凹が大きい一人ですが、世の中にはとても多くいるのです。
 発達に凸凹がある子どもの育て方で最も良くないのは、叱ってばかりいることです。叱られ続けた子どもは、自己肯定感がどんどん下がります。自己肯定感が下がると、「自分はダメな子だ」などと思い、何事にもやる気を失ってしまいます。その後、精神的に不安定になったり、非行に走ってしまったりするケースもあります。子どもをそうさせないためにも、自己肯定感を下げない育て方をすることが大切です。
 発達に凸凹がある子どもに対して必要なのは、周囲の大人が子どもの凸凹に気づき、生活のしづらさを取り除くことです。子どもが「わかった!」「できた!」と感じることができる環境を整えてあげるのです。基本は、①子どもと話をする時は「はっきり、短く、具体的に」すること、②言葉だけでなく、視覚的な手がかりや聴覚的な手がかりを使うこと、③目標を小さなステップに分けて、子どもが一歩一歩進めるようにすること、④子どもが少しでもできたら、たくさんほめることです。たとえば、じっとしていることが苦手な子どもには、「ちゃんと座りなさい」などと抽象的に叱るのではなく、「5を数える間、座ろう」などと約束をして、言葉と指を使ってカウントダウンをしていき、座っていられたら、たくさんほめます。それができるようになっていったら、数を少しずつ増やしていくといった具合です。
 同年齢の子どもとわが子を比べて、できないことに目を向けて心配に思う保護者の気持ちもわかります。しかし、誰かと比べるのではなく、わが子が昨日より今日、今日より明日と、一歩一歩、変化することを大事にしてください。「わが子はわが子の育ちがある」と保護者が思うことによって、子どもの本来持っている良さが発揮されていきます。

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幼児期の子どもとの関わりについて
水戸市立常磐幼稚園 園長(令和元年度茨城県国公立幼稚園・こども園長会会長) 板橋 幸子 氏

令和2年度は,コロナウイルス感染症拡大防止のため,家庭で過ごす時間が多くありました。どのように過ごされたでしょうか。
 「一緒にランチづくりをしました」「一緒に野菜や花の苗を植えました」等々。こういった小さなお手伝いの中で,子どもは自然と数を覚え,語彙を増やし,ものの名前や手順を覚えていきます。それら一つ一つが成長につながっていきます。子どもは様々な体験の中で学習の土台をつくっていきます。日常の生活や遊びの中で得るものは効果的な学びとなります。大人は先が見通せるからつい先回りして,あれこれ教えようとしたり,子どものやることにイライラしたりしがちですが,よりよくやらせようとせずに,子どもが発見したことや興味をもったことなどに寄り添い,ゆとりをもって共に楽しむことが大切です。
 幼稚園での出来事です。冬の寒い朝,バケツに氷が張っていました。光が当たってキラキラ輝いています。「きれいだね。」じっと見ていた子。「僕,この氷,持ち帰りたい。」「どうやって持ち帰るの。」先生が聞いています。「袋に入れる。」先生がビニール袋を渡します。そっと氷をつかんで袋に入れ,靴箱の上に置きました。しばらく遊んだ後,ビニール袋の中を見て「あっ,氷がない。」と驚いた声。「氷はどこにいっちゃったのだろう。」としばらく周りを見ていました。
 ここでは,大人は氷が解けるのはわかっている,でも,あえて答えを言わず,子どもに共感し体験を共有しています。幼児期は生活の中で興味をもったことややってみたいという欲求に基づいた体験を通して様々なことが培われる時期です。幼稚園では,幼児の主体的な活動が自然と引き出されるよう遊びの環境を意図的・計画的に構成しています。
 家庭は,幼児の成長の最も基礎となる心身の基盤を形成する場です。家庭でも,自然に触れ,おもしろさや不思議さ,心地よさを味わえるようにしたいものです。
 大人はとかく他人と比べあれこれと思い悩みます。すると,できないことや苦手なことに目がいき,気持ちがざわつきます。子どもは普段無意識に行動していることがたくさんあります。頑張ってできるようになることも,いつの間にかできることもあります。子どもへの期待が過剰にふくらむとそこに現実とのギャップよる不満が一緒にふくらみます。時には,ふーっと肩の力を抜いてみる。大人が心に余裕をもって子どもに関わり成長を見守っていくことも大切にしたいものです。
 

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そこにスマホがある時代、未就学児の保護者が知っておきたいこと
国立大学法人小樽商科大学 非常勤講師 高橋 大洋 氏

【スマホに子守をさせないで…と言われても】
スマホやゲーム機は、子どもの心身の発達に良くない、と周囲に言われたことはありますか。
さまざまな調査結果を見ても、眼が悪くなる、運動しなくなる、将来依存症になるのでは…などの心配をしている大人が、少なくありません。
しかし、そこにスマホがある時代。当の保護者からすれば、手が離せない時などには、ついスマホに頼りたくなるもの。どんな使わせ方なら「セーフ」なのでしょうか。
 
【いま頑張ると小学校高学年から後がラクに】
スマホやゲーム機の利用を、一生避け続けることは出来ません。だからこそ、最初が肝心。
その子の一生を左右するデビュー時期の使わせ方には、注意深くありたいものです。
 
まずは、使っても良いタイミングや場面かどうか、保護者との約束を守ることから習慣づけたいところです。節度を持って利用することの大切さを、最初にハッキリさせておくと、子どもの興味関心が広がり、利用時間や機会がぐっと増える小学校高学年から中学生にかけて、親子ともにラクになります。
 
未就学段階で特に気をつけたいのは、睡眠時間を削らないこと。就寝前1時間にはスマホなど明るい画面から離れること。そして、毎日のスマホやゲーム機の利用が、遊び時間全体の半分を超えないことです。その他の注意点については、こちらのセルフチェック(https://www.child-safenet.jp/selfcheck/)もぜひご覧ください。
 
【どうせスマホで遊ぶなら、ひと工夫】
ネット動画やゲームは、機器内で完結した、受け身の遊び方になりがちです。折り紙の動画を探して、実際に折ってみる、親子で動画を撮って編集してみるなど、「機器と現実を行き来する遊び方」や、一人きりではなく、家族で一緒にゲームを楽しむようにするなどの工夫が、お子さんの可能性を広げます。
 
なお、子どもに人気のYouTubeは、視聴時間が長くなりがち。動画の内容も少々心配ですね。実は、内容が子ども向け動画に限定され、タイマー機能も内蔵された「YouTube Kids」アプリが提供されています。Eテレのコンテンツが楽しめる「NHKキッズ」アプリなら、さらに安心できます。

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【絵本との幸せな出会い】【「読み聴かせ」で生きる力を育む】
朗読家 見澤 淑恵 氏

【絵本との幸せな出会い】
 みなさんは,大人になってから絵本を手にするようになったのは,いつ頃でしたか?
幼い頃,絵本が大好きだった方も,成長とともに絵本との距離は遠くなり,再び絵本を手にするようになったのは,我が子の誕生がきっかけだったという方が多いのでないでしょうか。私もそうでした。両親が読んでくれた大好きだった絵本も,姉妹が使い,その後,破損したり,大切に残しておきたかった絵本も,引越しなどの際に紛失してしまったりして,いつしかその絵本の存在も記憶から消えていきました。しかし,我が子が生まれ,図書館で本を選んでいると,ある小さな絵本の背表紙に指が止まりました。まるで指が覚えていたかのように。本を手に取ると,表紙も確かに見覚えがありました。めくっていくと,「不思議・・・」次のページに何が書いてあるか思い出せるのです。絵も,文章も,それから大好きだったページとセリフ,勝手に名前をつけた登場人物・・・。蘇ってきたのは絵本の絵と文章だけではありません。読んでくれた両親の声や,友達のお姉さんの声,一緒に聞いていた友人・姉妹の笑い声,それから一緒に食べたおやつまで。
 思い出の絵本を手にしただけで,幼かった自分の思い出の1ページを見た思いがしました。そして,絵本は子どもの心に自然と残っていると実感しました。    
 今,絵本を手にしている子どもたちに,大人になってから,こんな幸せな絵本との再会をしてもらいたいと思います。そのためにも,幼いときに絵本との出逢いが必要ですね。
 
 【「読み聴かせ」で生きる力を育む】
 私が,絵本の「読み聴かせ」の時に意識しているのは,子どもたちにとって,『聴く』になることです。『聴』という漢字は,「耳」に「目」と「心」を「プラス」して『聴』になります。つまり,目と耳と心で,絵本を感じてもらいたいのです。
 絵本の読み聴かせは,テレビやDVDとは違い,読んでくれる人がいて完成します。言葉を音にするだけでなく,その言葉の意味も声に乗せて伝えることができます。耳の時代と言われる幼児期の読み聴かせは,人間らしい心のともなった声で語られることに意味があると思います。
 子どもたちは,何度でも気に入った絵本を「読んで」と持ってきますよね。なぜ飽きないのだろう,と思う方が多いようです。でも,同じ絵本でも,同じ語り手であっても,昨日と今日の読み聴かせが全く同じということはありません。子どもが何かを発見して反応すれば,読み手の語り方も変わります。絵本をとおして,読み手と聞き手がコミュニケーションを取りながら,一つの世界を共有しているというのが子どもにとっては嬉しいのです。
 さて,体験が多いほど「生きる力」になると言われているのはご存知でしょうか。実際に体験していることを直接体験とすると,絵本は間接体験であると言えます。読み聴かせは,わずか数分間で,自宅で,我が子にリアルな間接体験をさせてあげることができるのです。ぜひお試しください。

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「日常の中にある木育」
子育てネットワークままもり 理事 おもちゃコンサルタント、木育インストラクター 今野 千秋 氏

  『木育(もくいく)』という言葉をご存知でしょうか?
 平成18年に閣議決定された「森林・林業基本計画」の中には、「市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるため、多様な関係者が連携・協力しながら、材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ、『木育』とも言うべき木材利用に関する教育活動を促進する。」とあります。
 木育という言葉が生まれてから、様々な人が、それぞれの立場で「木育活動」を行っていますが、私たち子育てネットワークままもりは、木のおもちゃ広場の開催を中心に環境教育としての木育活動を行っています。
 特にショッピングセンターで行われる木のおもちゃ広場は、認定NPO法人芸術と遊び創造協会「木育キャラバン」と連携した大きなイベントです。
芸術と遊び創造協会では、「木育」を「木が好きな人を育てる活動」と考え、そしてその活動が目指す目的を「かきくけこ」でまとめてあります。
「か」・・・環境を守る木育
「き」・・・木の文化を伝える
「く」・・・暮らしに木を取り入れる木育
「け」・・・経済を活性化させる
「こ」・・・子どもの心を豊かにする木育
 
 木のおもちゃの匂い、音、手触り、色は子どもの五感に働きかけ、感性豊かな心の発達を促すとともに、親にとっても癒しの効果があります。
 子どもが育つ環境に木を取り入れていくことで、 木の良さ(魅力)を知ってもらうきっかけにもなります。
また、日本人が日本の木を使うという事は、森林環境を守る事、日本の文化や技術を継承していく事にも繋がります。
 
 具体的にどんなことが木育なのでしょう?
 「木育」というと、教育のように何かを学ばなければならないとか、教えなければいけないと思ってしまうかもしれませんが、親子で身近にできる木育はたくさんあります。
 
例えば、
家の中で・・・
① 木や森、生き物など自然が出てくる絵本を読んでみる
本屋や図書館にも木や森、自然が出てくる絵本がたくさんあります。ぜひたくさん読んで、お気に入りの本を探してみてください。
② 木のおもちゃで遊ぶ
シンプルな木のおもちゃは、積んだり並べたり、見立て遊びをしたり。想像力が養われます。
③ 暮らしの中に木を取り入れる
お箸やスプーン、お皿やお椀、家の中にある木製品を探してみましょう。イベントで箸などを作るワークショップを開催していることもあります。自分で作ったお箸なら、大事に使いたくなりますね。
 
家の外で・・・
① お散歩をする
街路樹も花が咲いたり葉っぱが落ちたり、変化があります。季節の移り変わりや匂いを感じてみましょう。公園や森の木に抱きついたり、ドングリや葉っぱを拾って比べてみたりしてみよう。拾ってきた葉っぱやドングリで工作も楽しいですね。
② 木や花、野菜や果物を育ててみる
小さな種や芽から、育つ様子を観察してみましょう。お庭が無かったら、ベランダのプランターでも。
③ キャンプや登山をしてみる
小枝を拾って火おこし体験、鳥の声、水や木々の音に耳を澄ましてみましょう。自然を相手に、思い通りにいかない事もいい経験になります。
 
 ほんの一例ですが、やってみたいことはありましたか?暮らしの中に上手に木育を取り入れてみてくださいね。
 

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「幼児期(3~6歳)の子どもに対する家庭教育」
茨城キリスト教大学名誉教授・学術博士 茨城県教育委員会委員 ユーアイ保育園園長 川上 美智子 氏

 乳児期に培った力を土台に子どもの個性が伸びるのが3~6歳の幼児期です。脳が可塑性をもつ脳の感受性期に周囲がどう関わるかが心の発達に影響を与える等の幼児教育の重要性に鑑み、公による公平な教育を保障するため、国もいよいよ10月から3歳児以上の教育無償化に踏み切ります。実際には、3歳児の未就園児は5.2%、5歳児に至っては1.7%しかいません。日本のほとんどの子どもが幼稚園、幼保連携型認定こども園、保育園等に通園しており、幼児教育の括りで学校教育との整合が図られた幼保連携型認定こども園教育・保育要領、幼稚園教育要領、保育所保育指針に基づく学びの環境が与えられています。それとともに、子どもの健やかな成長を園と協力して家庭でもしっかり見守り、適切な援助をすることが求められます。
 国は、就学前教育の目安として「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)を挙げています。園に任せるだけでなく、そのサポートを子どもの最大の安全基地である家庭でも積極的に心がけていただければと思い紹介します。①自ら充実感をもって心と体を働かせ、健康や安全に心がける。②自分で考え、工夫し、諦めずにやり遂げる(自立心)。③友達や周囲の人と考えを共有し協力して成し遂げる(協同性)。④してよいこと悪いことがわかり、自分の行動を振り返り、他人に共感し相手の立場に立って行動し、周囲と折り合いをつけながら決まりを守る(道徳性・規範意識)。⑤家族を大切にする気持ち、自分が役に立つ気持ち、地域や社会とのつながりを大切にし、周囲の情報を役立てながら活動する(社会性)。⑥身近な事象や物の性質や仕組みを感じ取り、自分と異なる意見に気づいて自ら判断したり考え直したりする(思考力)。⑦自然の動植物や生命の不思議さ尊さに気づき、関心を深める(自然と生命の尊重)。⑧数量や図形、標識や文字の役割に気づき、興味関心をもち活用する(数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚)。⑨絵本や物語に親しみ、豊かな言葉や表現を身につけ言葉による伝え合いを楽しむ(言葉)。⑩素材の特徴や表現の仕方に気づき、自分で表現する喜びや意欲をもつ(豊かな感性と表現)。
 子どもの学びは勉強としてではなく、遊びという楽しい体験の中で日々少しずつ自発的に行えるよう仕掛ける必要があります。そのためには、机、絵や字を描くための用具、楽器、絵本、知育玩具など最低限の環境を整えることと家族の協力が不可欠です。「ワー、凄いね、よくできたね」など達成できたら褒める、よいところを見つけて褒める、共感し一緒に喜ぶ、一緒に悲しむ、一緒に感動する、一緒に遊ぶ、一緒に家事をする、真剣に話に耳を傾け会話するなど、毎日僅かな時間で構いませんから、優しく愛情をもって子どもとしっかり向き合うことが大切です。親との親密な関係と親と共に遊び学んだ経験は、親への信頼感を強め、自尊心、自己肯定感、自立心、協調性などの非認知能力を養い、一生忘れられない思い出となることでしょう。
 

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和式トイレ使えるかな?
幼児教育指導員 宮沢 好子 氏

 私が和式トイレの使い方を教えることの大切さを痛感したのは,遠足や園外保育時の公共トイレでの出来事でした。
 駅や公衆トイレの洋式には長蛇の列,空いているのは和式トイレだけ。先生が「空いているよ,見ててあげるから」と声をかけると,「できなーい」「やったことなーい」「しゃがめなーい」「こわーい」などと言って首を振る子どもたち。挑戦しようとする気持ちのない子が多く,トイレの中は先生と子どもたちのやりとりで大騒ぎでした。
 一人一人の排泄を手伝ってみると,上手にしゃがめない,お尻を後方に突き出せずうまく排泄ができないという状況でした。 バス・電車の発車時刻に急かされハラハラドキドキしながら,何とか全員無事にトイレを済ませた時には安堵しましたが,その一方で和式トイレの練習を指導してなかったことを痛烈に反省しました。             
 自宅や公共施設などで,洋式トイレの普及が進む中,なぜ和式トイレの練習?と思われる方もいらっしゃるでしょうが,練習しておくことでいざという時に役立ちます。
 また,小学校によっては,まだ和式トイレの学校もあります。そうした学校では,洋式トイレじゃないと大便ができないために, 学校の和式トイレで用を足せず,トイレを我慢し,腹痛を訴える子ども(新入児童)がいると聞きます。
園は勿論,家庭でも機会あるごとに和式トイレの使い方の練習をしたり,排泄の大切さを親子で話し合ったりしてみることをお勧めします。

2019年2月23日の読売新聞に次のような記事が載っています。

常磐短期大学特任准教授(発達心理学)の村上八千代さんに,家庭で練習する際のこつを聞いた。
 はじめは服を着たまましゃがむ練習をすることを勧める。
 子どもには「カエルのポーズをして,手を床から離してみよう」と伝えるといい。
 1分間ほどは姿勢を保てるようにしたい。
 和式トイレをまたぐ際は,便器前方の半球形部分の横に,つま先を合わせてしゃがむと失敗しにくい。
 失敗して便器の周りを汚してしまった場合に備え,トイレットペーパーで排泄物を拭き取ってトイレに流し,きちんと手を洗うことを教える。
 子どもを取り巻く環境は日々変化していますが,トイレに限らず多くのことを体験しながら自ら考え,繰り返し挑戦して体に覚えさせることが大事です。体で覚えたことは大人になっても忘れないものです。                                                    
何事においても自発性をもち,応用力を発揮し,物事に対処できる子に育てませんか。                                                                 引用文献  読売新聞(2019.2.23)

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子育てのレシピ
水戸教育事務所新採教員指導員 矢口 明子 氏

 子育ては,たやすいことではなく,思った以上に難しく,不安を抱えてしまうことがあります。そこで,何気ない日常のエピソードから子育て世代への応援をしたいと思います。

エピソード1  「お父さん,こっちを見て。」
 近くの公園で,2人の子をもつ父親が子どもと楽しそうに遊んでいた。そこに別の親子も加わり,子どもたちは一緒になってアスレチックで遊んでいた。父親は,近くのベンチに座り子どもの声に手を振って応えていた。やがて,子どもは,帰りに父親と手をつなぎ嬉しそうに話しかけていたが,手元のスマホに目を落としていた父親には聞こえないようであった。

 公園で遊んでいる親子の姿から,積極的に子育てに参加している父親の温かさを感じます。また,父親は,子どものよいモデルになると想像できます。親と子の関係は,育ち合いです。子どもから親にしてもらい,親をモデルとして子どもが育つのです。お料理の親子丼のようです。親子丼は,味のある鶏肉と,ふっくらした新鮮な卵との相性で美味しくなります。また,鶏肉には,必要な歯ごたえがないと味も引き立ちません。子どもは,一生懸命父親に声をかけ,楽しい時間を最後まで共有したかったのです。時間を間違うと卵が固まって親子丼の味が落ちてしまいます。美味しく食べるためには,基本を守っていくことで結果も見えてきます。ただ子育ては,レシピ(マニュアル)通りにはいかないものです。

エピソード2  「ここで,待っているね。」
 デパートの食品売り場に,3歳くらいの子どもが通路の隅で,両手に荷物をしっかり抱えたまま眠っていた。母親は,暮れの買い物客の混雑から,我が子を近くに座らせ買い物を済ませようとしていたのだろう。その子は,母親の姿を追いつつ,待ちくたびれていつの間にか眠ってしまっていた。買い物客も最初は,足元の子どもにびっくりし,声をかけようとするが,かわいい寝顔に出会い,笑顔で通り過ぎていった。

 荷物を両手で抱え,母親との約束を守り,その場で寝込んでしまった子どもの姿はほほえましい光景です。母親は,混雑の状況から待たせることを選択したのでしょう。子育て中の母親は,いろいろな場面で選択を迫られる状況があるものです。子育ては,周囲に見守ってもらいながら,時には助言をもらいながら行うことが大切です。その状況は,ハンバーグ作りに似ています。美味しいハンバーグを作るには,焼き加減を見ながら焼くこと,周りの人に味をみてもらい,何の味が足りないのかを助言してもらうことが必要です。同様に子育ても,一緒に共感して(見守って)もらう周囲の大人の存在が不可欠です。お互い声を掛け合って笑顔で助け合うことが大切です。また,子育て中は,不安を軽減できるいろいろな施設や専門機関を活用し,子育てについてのアドバイスをもらい,支えてもらえることを知っておきましょう。更にその施設で,子どもを介して他の母親と話すことができること,子どもの発達を予測して,楽しみながら子育てができることも知っておきましょう。他の人の言葉を情報の一つとして汲み取り,子育てに役立ててみましょう。

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大人の良い心持ち
幼保連携型認定こども園サンキッズ 園長 長谷川 良則 氏

 私は茨城県坂東市で幼保連携型認定こども園(幼稚園と保育所の機能がある施設)を運営しています。生後4ヵ月(乳児)から5歳(就学前・年長児)のお子さんの教育,保育活動(以下保育)を行っています。
 今回は特に3歳(年少児)から5歳(年長児)のお子さんの成長に注目してお話させてもらいます。
 この時期のお子さんはご自分のお子さんはもちろんのこと,園に送り迎えをされる際に「誰のお父さん?お母さん?」などと子ども達から声を掛けてくれたり,行事等で歌を歌ったり,お遊戯を披露してくれる姿は,誰もがとても「可愛らしい」と思われることでしょう。
 私たち保育教諭(保育士資格と幼稚園教諭免許)にとっても,子ども達を可愛らしいと思う気持ちは,保育教諭以外のお仕事をされている方と全く同じです。そこから,集団での生活,身支度,トイレ等,将来の自立した姿を思い描いての保育を毎日行っています。
 0歳児の乳児期から就学前の幼児期の6年間は,心と身体が大きく成長する時期です。
私たちは,内閣府の定める幼保連携型認定こども園における教育・保育要領(以下要領)について保育者指導養成校等で学び,5領域(健康,人間関係,環境,言葉,表現)に毎日の活動を照らし合わせ,保育を進めています。さらには,平成30年度の指導要領の改訂により,5領域を発展させた,「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を今の時代に合った保育の姿と信じ,子どもと共に保育を行っています。
 幼児期のお子さんは,園生活においても,友だち同士,保育者の言葉やしぐさを,大人の何倍もの速度で吸収します。良い言葉掛け,丁寧な言葉遣い,心持ちもそのまま伝わります。
 ご家庭においても,大人の使う言葉,子どもに対する愛情がまっすぐに伝わると考えています。私自身にいつも言い聞かせていることではありますが,我が家においては,子どもたちが兄弟姉妹で喧嘩をしている時に使う言葉は,自分が夫婦喧嘩で使っている言葉そのものです。大人になると叱ってくれる人も少なくなってしまいます。子どもの教育は,まず大人の心がけからと考えています。
 子どもも大人も失敗して,前に進んでいきます。いろいろとお恥ずかしいお話をさせてもらい大変恐縮ですが,幼児期の子ども達は,たくさん一緒に遊んで,たくさん誉めてもらうことを欲していると信じています。失敗を叱ることは程々に,「できた!」という成功体験を共感してあげることを増やしてください。子どもは成長過程で,記憶の剪定を行います。幼児期の具体的な内容は覚えていなくても,嬉しかった,楽しかった気持ちは残ります。将来の良い人格者を今育てる。良い社会づくりのための保育を保護者の皆さんと共に行うことが私の生きがいです。

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幼児の遊びは学び
鹿行教育事務所 新採教員指導員 荒原かつみ 氏

 現場を離れて久しいが,今年は月に数日ほど幼稚園と認定こども園を訪問する機会に恵まれた。その中で感じることだが,3歳4歳の子どもたちと,はつらつとした先生たちとの関わりは見ていて実に微笑ましい。特に子どもたちの笑顔からはたくさんのパワーをもらえる。又,時々,たどたどしい文字で書かれた手紙をもらうこともある。折り紙や顔を描いた絵をプレゼントしてくれる子どももいる。そして,「せんせい このあいだあげた おてがみ,もっている?」と思い出したように言われてしまうので,大事に鞄の中にしまって,訪問時には忘れないようにしている。心温まる時間である。
 初めて5月に訪問した園では,3歳児の子どもたちはまだオムツをしている幼児もいて,集団生活に慣れていない子どもたちを先生たちは温かく関わりながらトイレトレーニングに奮闘していた。戸外で遊ぶ時は,園庭の固定遊具で怪我をしないように,安全には十分に配慮しながら,外遊びを満喫できるように一緒に遊ぶ。そして一つ一つの活動に目を配りながら,基本的なことを身につけさせるように指導している。4歳児になると,大分お兄さんお姉さんになって,先生の言葉に,次は「これをして」と,見通しをもって活動している。1歳の年齢の差がこんなにも大きいのかと感じることが多く,毎月訪問するたびに子どもたちの成長を感じている。
 幼児教育の中では,年間を通して沢山の行事がある。例えばその中に,祖父母お楽しみ会という行事がある。私が先生になりたての頃は,一人の幼児に祖母が参加ということがほとんどであったが,今は祖父母参加も珍しくなくなった。お楽しみ会での温かい雰囲気と優しく接する祖父母との関わりは,子どもたちにとってかけがえのない時間で,保護者の保育参観とはまた違った交流を感じる。今は少子化となり,つい甘やかしてしまうということはあるかもしれないが,ゆったりとした祖父母との関わりは,この年齢の子どもたちにとって大切なものと感じる。
 幼児教育は遊びを通した教育と言われる。幼児期の遊びは学びである。日々のままごと,空き箱製作,砂遊び,友達とのごっこ遊び等,毎日子どもたちはいろいろな遊びに取り組み,その遊びを通しての体験から人間関係や道徳性等の沢山のことを学んでいる。友達との遊びの中でトラブルも起きるが,その中で相手の思いや考えを知り,自分の思いや考えを言葉に出して伝えることの大切さも知る。また,困っている友達への思いやりや,我慢することも学んでいる。人間形成の基礎を培うことの大切な幼児期に,思いっきり遊び,いろいろなことに興味や関心をもちながら意欲的に取り組める子どもたちを育てることの大切さを感じる。この大切な幼児期に家庭とのより良い関係の中で,幼児期に育てなければならないことを,しっかりとした協力を得ながら築いていきたい。
 何かとせわしい現代。共働き世帯も多くなり,ますます長時間保育になっていくことだろう。子どもと共に親育ちをして,親としても共に育ってもらいたい。今後,幼児教育施設が担うべきことが多くなっていくと思うが,一人一人の子どもたちが温かい家庭と集団生活の中で,幸せな日々を過ごせるように願っている。

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「自分から進んで,頑張れる子」を育てるには!
茨城女子短期大学  保育科長 教授 助川 公継 氏

驚くほどの成長
 幼児期の成長のスピードには目を見張るものがあります。急に話し始めたり,行動に積極性が出てきたりと驚いてしまうほどです。3歳を過ぎると,運動機能も発達し基本的な動作が一通りできるようになるとともに,基本的な生活習慣もほぼ自立できるようになってきます。語彙数も急激に増加し,知的興味や関心も高まってきます。仲間と遊び,仲間の中の一人という自覚が生まれ,集団的な遊びや協同的な活動もみられるようになってきます。大切なのは,個としての成長と同時に集団の一員としての活動が少しずつできることです。
 しかし,その一方で,親の期待した反応と異なる言動をしたり,なかなか言うことを聞かなかったりする場面もあるでしょう。「何とか言うことを聞かせたい」,「ちゃんとした行動がとれるようにさせたい」という焦りもでてきます。
しかし,発達途上の子どもは,まだ反省をすることができません。「どうして,○○してしまったのか?」と考える力も勿論ありません。本当は,何とか問題を改善したいのに,「どうして,あなたは○○するの!」とつい責めてしまうようなこともあるでしょう。子どもも好きでしているのではないとわかっていても…。
ほめて伸ばす!
 子どもは,「がんばって良くなろうとしているのに,どうしてやってしまったのか」がわかりません。ほめて,伸ばすということは大事です。ほめることは自信につながります。その逆に「この部分は直したいな!」ということもあります。それでは直したいことは,叱ることで改善するでしょうか?「叱る=非難する,責める」になっていませんか?
直したいことに挑戦させるには!
 子どもに限らず,人は非難されたり,責められたりすると「落ち込むか,言い返すか(反抗するか),言い訳をするか」といった反応を示します。大人ですと,自分を冷静に見つめ「何が問題なのか? これから,どうすればよいのか?」と考えることができるかもしれませんが,発達途上の子どもは冷静に振り返ることはできません。「自分が悪いんだ」,「またやってしまった」,「自分はダメな人間なのかな?」と自分を責めてしまい,そのことに悩んだり,自信を失ったりします。本来ならば「何を直せばいいのか」,「これからは,○○しよう」と次のステップへ進んでほしいのに。 
責めるのではなく,問題そのものを取り出して,いっしょに考える
 ポイントは責めることではなく,「あなたには,良いところもあるのに,今回はどうして○○してしまったのか」と「何が問題なのかを,取り出していっしょに考える」ことなのです。幼児期には,「あ~あ~,おへそが曲がっちゃったかな」とか「あら,○○虫がでてきたのかな」といった言葉をかけることがあります。「おへそ」とか「○○虫」というのは,実は問題を取り出すのには,子どもにとってわかりやすい言葉です。「◯◯してしまうのは,『◯◯虫』がいるからかな?」,「どんな時,○○虫がでてくるのかな?」「『○○虫』はどんな悪さをするのかな?何でもいいから話して!」という具合に,あなたが悪いのではなく,○○虫が悪さをするから,でてこないようにしようというスタンスで接すると,子どもも「頑張ってみようかな」と前向きに考えるようになります。本人が問題ではなく,問題になっていることが問題なのです。このことを問題の外在化といいます。責めるのではなく,「どうしたら,よくなるのか」に焦点を絞って語りかけましょう。

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「どうほめる?」
常磐短期大学幼児教育保育学科  准教授 木村由希 氏

 最近お子さんのことをほめたのはどんな時でしたか?
 その時、どんな言葉でほめましたか?
 子どもの成長と共に、親御さんからは「ほめるって結構難しい」という声が聞かれることが多くなります。それはなぜなのでしょう?
 赤ちゃんだった頃を思い出してみてください。「笑った!」「スプーンでご飯を食べた!」「一人で立った」「トイレでオシッコができた!」日々できるようになることがたくさんあって、嬉しくて、きっとたくさんたくさんほめていましたよね。
それが、いつからでしょう。笑っただけでは、スプーンでご飯を食べただけでは、一人で立っただけでは、トイレでオシッコができただけでは…ほめることはなくなってしまいしたよね。
 でも、それは当然のこと。「ほめる」言葉も、内容も、子どもの成長に合わせて変化していくものですから…。
大切なのは、ほめた言葉が子どもの心にちゃんと響いているかということだと思います。4~5歳頃になると、“いつも同じ”ほめ言葉では心が動かされなくなるようです。自分が本当に頑張ったと思うこと、上手にできたと思うこと、嬉しいと思ったこと…ほめられるに値することを、信頼する人から認められて初めて、喜びを感じるようになるのです。ですから、子どもが何かに取り組んでいる時、「見て」と何かを持ってきた時、お手伝いをしてくれた時、その子の頑張りやこだわり、取り組み方を丁寧に見取り、言葉にしてあげることが必要になってきます。その子がこだわったところ、あきらめずに何度も何度も挑戦したところ、そのような部分を注意深く見て、言葉にしてみてください。そして一緒に喜んでください。きっとそれが「心に響く」ほめ言葉になるのだと思います。
 アメリカに伝わる子育ての知恵に【101 WAY TO PRAISE YOUR CHILD】というものがあります。「子どもをほめる101の言葉」と訳すことができるでしょうか。「Excellent!」「Good job!」「I’m proud of you」等々、たくさんのほめ言葉が載っています。ひとつの日本語だけで101もの「ほめ言葉」を探すのは難しいかもしれません。でも、「上手だね」「すごいね」「頑張ったね」のほめ言葉を「○○の~なところが上手だね」「△△の~なところは、すごいと思う」「最後まであきらめないで○○して××できたね」「○○は、すごく頑張ったよね。ママも嬉しかったな」などと言葉を足すことで、101どころか、200も300ものほめ言葉が生まれます。そして、その言葉は、世界に一つだけのほめ言葉になり、子どもの心の奥深くに響くことでしょう。
 ぜひ、世界に一つの「ほめ言葉」を探しながら、日々のお子さんの成長する姿を見守ってあげてくださいね。

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親子で絵本の世界を楽しもう!! 【パート1】
茨城女子短期大学 講師 綿引 喜恵子 氏

絵本の読み聞かせは アラジンの魔法のランプ
子どもの心はどんどん物語の時空へ入っていく。絵本の中身はファンタジーでも
読み手の感情を込めた肉声
寄り添う体の感触
想像力を刺激する絵
ゆっくりと流れる時間
それらが一体となって、子どもにとっては絵本の世界が全身で感じる「現実体験」に等しいものとなっていく。心のなかに 忘れえぬものとして染み渡っていく。              
みんな絵本から 柳田邦男著
本が好きになるかどうかは、大人からどれだけ本を読んでもらえたかで決まる、と言われています。
絵本に親しんでいない子は、目に見えている事しか見えません。しかし、絵本に親しんでいる子は、心の中で何が起こっているかを読み取ろうとするので他人の痛みを自分の痛みとして感じ取れます。相手が何を望み、何を悲しく思っているのか、相手の心を想像するということができる、と言われます。このことは、人間として大切な「思いやり」をもつことができるということではないかと思います。
パソコンやスマホなどデジタル機器による情報社会の現代、子どもたちが人とのコミュニケーションをとる機会がどんどん減ってきています。そのようななかで、絵本の読み聞かせは、社会性や倫理観を育み,言語力や感性・コミュニケーション力を育てていきます。一日の中でほんの少しの時間、子どものために絵本を通して向き合う時間をつくってみてはいかがでしょうか。
 

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親子で絵本の世界を楽しもう!! 【パート2】
茨城女子短期大学 講師 綿引 喜恵子 氏

絵本の読み聞かせとは、「毎日読んでやる。ゆっくり読んでやる。書いてある文字をそのまま読む。」ことです。『額縁と絵』に例えれば、額縁は読み手であり、絵は絵本、額縁がキラキラと目立ってしまっては、子どもは絵の方に集中できません。
読んだ後、「感想は聞かない。質問はしない。」ことです。読み終わった後、どんな事を聞かれるのだろうと思いながら聞いていては、絵本の主人公になれずお話の世界に没頭できなくなります。
「心を込めて読んであげましょう。」
心を込められない本は適さない本と言うことになります。それを選択するのは大人であり、「もう一回読んで!」と選択してきた子どもたちです。
「9歳ぐらいまでは読んであげましょう。」
字が読める、読めないにかかわらず読んであげる。読めるからと字をおっていたのでは物語を楽しめません。年長組の子どもたちを「A字が読める子」と「B字が読めない子」の2グループ分けて、「Aは自分で読ませる」、「Bは読み聞かせする。」と、Bの子どもたちの方が深く理解していたと言う結果が出ています。

ここで絵本の紹介をさせていただきます。
お父さんに読んでもらいたい絵本
 『おとうさんのちず』(ユリ・シュルヴィッツ作 さくまゆみこ訳 あすなろ書房)
戦争で故郷を追われ、過酷な暮らしをしていたとき、わずかなお金でパンを買いに行ったお父さんが買ってきてくれたものは、世界地図でした。この世界地図を見て育った少年は…。世界地図は少年にパン以上のものを与えてくれました。お父さんは、子どもの将来を見通し、広い心で見つめ、包み込んでくれています。人間にとって大切なのは何なのか教えてくれる絵本です。
 

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親子で絵本の世界を楽しもう!! 【パート3】
茨城女子短期大学 講師 綿引 喜恵子 氏

お母さんに読んでもらいたい絵本
『ちょっとだけ』 (瀧村有子 作 鈴木永子 絵 福音館書店)
 赤ちゃんが生まれてお姉さんになった主人公が,ママを助けようと幼いなりに奮闘する姿が描かれています。
 二人目のお子さんが生まれて子育てに頑張っているお母さんから相談を受けたことがあります。幼稚園に通っている上の子のAちゃんが最近、何を言っても[イヤ!イヤ!]と全然お母さんの言うことを聞かなくなって困っていると。一通りお母さんの話を聞いた後、「お母さん この絵本読んでみますか」と,この絵本をお貸ししました。次の日 「A子の気持ちがよく分かりました。涙がとまらなかった」と。絵本が語り掛ける、絵本の力です。
親子で読んで欲しい絵本
『だいじょうぶだよ、ゾウさん』(ローレンス・ブルギニヨン 作 ヴァレリー・ダール 絵  柳田邦男 訳)
 年老いてゆくゾウさんと、幼いネズミとの心温まる話です。先の世界が見えてきて、愛する人の死を受け入れるための心の準備をしていく、生命の尊厳を感じさせてくれる優しく切ない絵本です。

「みんな 絵本から」柳田邦男著   -30歳代のお母さんからの手紙―
 小学校1年生の次男は動物が好きなので、絵本「だいじょうぶだよ、ゾウさん」を自分で選んで買ったのも、絵にひかれたからでした。はじめは、ゾウとネズミは仲よしというイメージしかなかったようです。しかし、私とふたりで、二度三度と読むうちに、この本の伝えたかったことが少しずつわかってきて、ゾウを昨年亡くしたやさしかった父方の叔父に、ネズミを自分や自分の兄弟におきかえていったようです。
 また、担任の先生がクラスの子どもたちにこの絵本を読み聞かせをしたとき、途中で先生が泣いてしまったと、息子が教えてくれました。突然の先生の涙に、クラスにどよめきが起こったそうです。先生の涙を見た子どもたちが、死というものの悲しさを、少しでも感じとることのできたいい機会になったのではないかと思いました。
  子育てに奮闘中のお父さん、お母さん。子どもとじっくりかかわれるのは、生まれてきて精々6歳~7歳頃までです。
子どもは待ったなしに育っていきます。親子で絵本の世界に親しみ、感動を共有できる時間をどうぞ大切にして下さい。

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「触れ合いの時間と体づくり」
認定こども園大成学園幼稚園 園長 木村 久美子 氏

親は,子どもと一緒に学ぼうとする姿勢を保ち,同じ時間を共有することをしなければならない。そうでないと,子どもからの信頼はもらえない。やがて外の社会に出て行ったとき,心の基地としての親の役目を果たせなくなる。
 まず,就学前の3歳児,4歳児,5歳児の一般的な特徴は次のようになる。(個人差があるので考慮)
自分が体験したことで自信や確信をもったことをやりたがる3歳児。自分以外の人間,他者の存在を意識できるが他者の気持ちを推し測ることができたり,できなかったりする4歳児。他者の気持ちが想像できるようになり,力を合わせようとしたり,ルールを守って集団遊びもできるようになったりするのが5歳児である。
 これらを考えると,親としてやるべき役割というのは,一緒に触れ合うことだと言える。親が子どもと目を合わせて話しかけ,子どもの言おうとしていることをゆったり待ったり,ごっこ遊びで親が成り切って遊んだりする中で,コミュニーケーション(聞く,話す)を充分にとることに心がける必要がある。子どもは,親に手放しで自分が愛されていることを自覚し,他者の存在や自分とは違う考えをもっている存在にも気づき,相手を思う心が育つのではないかと思う。これは,プラスの刺激を親から受けた場合であるので,マイナスの刺激つまり親の怒りの気持ち,苦しい気持ち,焦りの気持ち等のまま接すれば,子どもの中に相手や周りを疎む心が育つと思われる。
 そして,もう一つ親として大事な役割がある。この時期は,集団生活を初めて経験する時期であり,社会人としての第一歩と考えても良い。そのために体をつくることだ。太陽が昇ったら目覚め,日中は動き(遊ぶ),日没後は眠るというのは,人間の体の基本で,命は自分の努力で獲得できないから,その命の源になる体をしっかりつくる必要がある。自立を目指す子どもにとって大変重要なことである。やる気や集中力,忍耐力,想像力等の目に見えない心の原動力は,充実した体に蓄えられているエネルギーだからだ。体のエネルギーは,生活のリズム=食べる,眠る,動く(遊ぶ)ができていないと蓄えることはできない。この3つの要素が一つでも欠けると,エネルギーは作られない。こうなると体の成長も望めないし,目に見えない心の成長も危ういということになる。
 健全な自立した子どもへと心身ともに成長を促すためには,集団の一員として社会への第一歩を踏み出す時期に,心の栄養(親が子どもと向き合う・心身で触れ合う)をたっぷり与えることと,一生を生き抜く基盤である体づくりをしておくことである。

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「障害のある子どもの子育て」
県立常陸太田特別支援学校 校長 白土 良子 氏

 障害があっても,自分の個性を生かし,夢を実現している方がたくさんいます。その方々は共通して,自分の夢を実現できたのは家族の存在が大きいと言っています。つらくて,悲しくて,どうしようもなくなって,パニックになって泣いていたとき,そばで一緒に泣いてくれたお母さん,黙って抱きしめてくれたお父さん,どんな時もありのままの自分を認め応援してくれたことが,様々な困難を乗り越える力となっていったということです。
 私の周りいる子ども達も,自分の目標に向かって毎日頑張っています。ハンディキャップがあっても,笑顔で精一杯努力する姿は周りの人を勇気づけます。そしてご家族も同じように,強くて優しくて,とても魅力的な方ばかりです。子どもの発達を人と比べるのではなく,自分の子どもの良さに目を向け,小さな成長に大きな喜びを感じていらっしゃいます。もちろん,その笑顔の陰には言葉にできない程のご苦労もあったと思います。しかし,それを乗り越えてきたからこそ得た深い輝きに溢れています。
  お子さんの個性は,一人一人違います。早い時期からお子さんに合った支援方法について療育機関,医療機関,保育所や幼稚園の先生方といっしょに考えていくことは,お母さんにとってもお子さんにとっても,とてもプラスになります。また,先輩のお母さんの話は子育てに大いに参考になると思います。
 いろいろな方の話を聞いたり自分の思いを伝えたりすることによって,お母さん自身が安心しますし,より子どもに合った子育ての仕方を見つけることにつながります。「この子にあった生活の仕方がもっと早くわかっていれば,親子共々こんなに苦労することもなかったのに」と振り返る方もいらっしゃいます。
 さらに,就学前にはお子さんの学びの場を検討することになりますが,お子さんの成長にとってより良い就学先を考えるためにも,相談できるネットワークをできるだけ早くから築いておくことはとても大切です。
 障害のあるお子さんの子育ては,時に迷ったり悩んだりすることもあると思いますが,一人で抱え込まず,信頼できる人に相談することによって一歩前に進むことができます。お子さんの発達のためにも,悩んでいる時間はできるだけ短い方が良いですよね。子どもも家族も毎日を楽しんでいる,そして子どもの笑顔に幸せを感じられる,それがお子さんの健やかな成長に確実につながる道だと思います。

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「小学校入学までに身につけたい力」
河和田幼稚園長 嶋田 眞美 氏

 私の幼稚園では,夏休みなど長期の休み前に,子ども達と3つの約束をしています。
 ①早寝早起きをすること。②自分のことは自分でする。③おうちの人の手伝いをすること。この3つを約束して休みが終わると「3つの約束守れたかしら?」と聞くと,子どもは自分を振り返って「できた!」と言ったり,できなかった子は黙っていたりします。さて,約束の中身を一つ一つ見ていきましょう。
①早寝早起きをすること。
 これに朝ごはんが追加されて「早寝早起き朝ごはん」とたいへん語呂の良い標語で皆さんの頭にも入っているのではないでしょうか。これを実行することは,生活のリズムが身に付くことで,心の安定にもつながり,それが意欲にもつながっていくので,大切にしてほしいことです。
②自分のことは自分でする。
 「自分のこと」と一口に言っても,何を「自分のこと」とするか?そこが問題ですが,例えば,衣服の着脱。これによってどんな力が養われるか…。まず,手先を使いますし,上下左右裏表などもわかります。シャツの裾をズボンに入れたり襟を整えたりすれば着こなし,オシャレにまで目を向けることになりますね。こうして自分でできることが増えることは「自由の獲得」にもつながります。
③おうちの人のお手伝いをする。
 親子でどんなお手伝いをするか話し合って,それを実行するということです。そして子どもがお手伝いをしたら親は「ありがとう」と言うでしょう,そうすると子どもは「私は役に立っている」ことが感じられて自信(自己有用感)につながるし,感謝の気持ちによって親子の関係も良くなりますね。
 この3つをそのまま“小学校入学までに身につけたい力”としたいと思います。
もうお気付きだと思いますが,この3つを実行するには“子どもをやる気にさせる親の工夫”が必要ですし,それを伝える“親子のコミュニケーション”が必然的に生まれます。こうした関わりが小学校入学まで,さらに入学後も子どもを支える力になっていくと思います。親の“生活を丁寧に楽しむ考え方”が子どもの生活力を育みます。
 

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幼児期の体験の重要性
ひたちなか市立津田小学校長 塩田 智代 氏

 私がかつて勤務していた幼稚園の4歳の女の子の話です。春の幼稚園の畑で,アオムシがキャベツを食べているところを見つけ「アオムシさんはどうしてキャベツを食べるの。きっとキャベツが好きなんだね。」と言いました。同じ子が,冬の畑で,ダイコンの葉を食べているアオムシを見つけ「アオムシさん,それはキャベツじゃないよ。」と一生懸命にアオムシに教えたのですが,それでも食べ続けるアオムシを見ているうちに,「アオムシさんはダイコンの葉も好きなんだね。」と言いました。
ここで注目したいのは,「キャベツが」の「が」と,「ダイコンの葉も」の「も」です。この4歳児は形も栽培時期も異なるキャベツとダイコンの間に,アオムシを介することで自力で結び付きを見いだしたのです。
 もう1つは,他の園の園長先生からお聞きした話です。
 年長児のお別れ会の飾り付けをしようと4歳児が2階の教室で,輪飾りを作りました。教室を1周するほど長い長い輪飾りができました。それをみんなで大事に持って,1階のホールまで運び,飾り付けようとしたら「あれ,短くなっちゃった。おかしいな。どうしてだろう」「途中に落として来ちゃったのかな」とみんなで2階の教室まで戻りましたが落ちていません。教室に戻ったら,「あれ。長くなっているよ」「やっぱり長いよね」「もう一度ホールに行こう」と階段を下りてホールに着くと「短くなった。落としても来なかったし,変だね」と,子ども達は,何度も2階の教室と1階のホールを行ったり来たりしたそうです。そして,子ども達が出した結論は,なんと「あの階段は,上がると輪飾りが長くなり,降りると短くなる魔法の階段なんだ。」だったそうです。子ども達なりに知っている知識や情報を結びつけながら輪飾りが短くなったり長くなったりした理由を考え出そうとしたのです。
 園長先生は「そう,魔法の階段なんだね」とだけ言い,いつか広さや割合の勉強をしたときに,このことを思い出してくれる子がいるといいなと思ったそうです。
 エピソードとして,2つの場面を切り取って紹介しましたが,子ども達の日常はこのような何気ない体験と小さな感動で満ち満ちています。そして,子ども達の心の中には,驚き,喜び,嬉しさ,悲しさ,悔しさなどの感情が生まれ,それらを表情や態度,言葉で一生懸命に表現し伝えようとします。そういう子ども達を見ていると,私は彼らがとてもいとおしくなります。
五感を駆使した遊びの中にこそ,幼児期の学びがあるのです。是非いっぱい遊んでいっぱいお話する子ども達を温かく見守ってください。
 

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自然の中での遊びを通して学ぶ ~意欲や自己有能感、社会性、命の大切さなど!~①
国立磐梯青少年交流の家 事業推進室長 室井 修一 氏

  
友達と楽しそうに遊んでいますね。
自然の中は豊かな環境が広がっていますから、自分の興味関心のあることにじっくりと関わることができます。
じっくりと関わる中でその物を知ることになります。
知ることの喜びは、更に知りたいと意欲につながります。
この意欲が、積極的に物事に働きかける力となります。
興味や関心、探求心を育みます。
更に自然の中では、地面がデコボコ(不整地)の場所を歩いたり、走ったり、樹木があれば木登りをしたりジャンプをしたり、岩があれば登ったりジャンプしたり…。 
かなり、身体を使って遊ぶことができます。
多様な動きをすればするほど、神経系の発達は促進され、子どもたちの脳は6歳でほぼ80%完成します。
この時期にこそ、全身を使った動きを通して諸機能が健全に発達してほしいものです。
体が活発に動く心地よさを味わうことで、体を積極的に動かしますので、運動能力や体力の向上にも良い影響を与えますね!








 

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自然の中での遊びを通して学ぶ ~意欲や自己有能感、社会性、命の大切さなど!~②
国立磐梯青少年交流の家 事業推進室長 室井修一 氏

自然の中での遊びを通して“認知能力”も様々発展します。
例えば、どんぐりを拾って遊んでいます。
形や色、大きさなど様々です。この違いが、子どもにとっては“宝物”であったり、”友達にあげても良いもの”であったり、物を通して様々なやりとりや工夫をしていきます。
さらに、数値の認識も出てきます。
森の中でよく聞かれます。「ドングリちょうだい。」「いいよ、3つあげるね」などと子どもたちのやりとりの中で、必然的に数値の認識をしながら遊んでいます。
この時期に大切なのは、“遊びを通して学ぶ”ということす。
算数そのものを学ぶのは小学校から十分に学習できます。この時期は具体的な事象を通して、直接触れて認識をしていくことが大切です。
色彩感覚や物的比較の感覚も鋭くなってきます。春の森、秋の森では紅葉により葉の色が違います。
子どもたちはすぐに気づきますね。さらに、色が濃い薄いことも気づきます。春のことを覚えているからこそ、秋の色と比較ができるのですね。
 紅葉の時期は、もう一つ「いのち」について考える良い機会ともなります。
「葉っぱのフレディ―いのちの旅―」(童話屋 レオ・バスカーリア作 みらい なな訳)
「フレディーは、枯れてやがて地面に落ちていきます。でもフレディーのいのちはつながるのです。水に交じり土に溶け込んで木を育てる力になるのです。(一部省略)」
葉っぱ一枚一枚に命があり、自然界をつなぐ重要な働きをしていることを肌で感じます。
 このように自然は、偉大で神秘的です。
その中で生かされている私たち人間の命も、再認識することができます。もちろん小さなアリさんや昆虫もたくさんいます。
今までは、アリさんを踏んでいたかもしれません。でも、自然の中でアリさんの命を感じることによって大切な命と認識をします。まさに畏敬の念が育まれます。
自然の中は、身体的な遊びを通した体力面の向上が図れる一方で、豊かな感受性や心情を育むことができます。
この力は人生を豊かにしてくれるでしょう!

 

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自然の中での遊びを通して学ぶ ~意欲や自己有能感、社会性、命の大切さなど!~③
国立磐梯青少年交流の家 事業推進室長 室井修一 氏

3歳~6歳の発達の特徴を押さえておきましょう。
子どもの発達を理解しておくことで、自然と対話をしながら豊かな自然体験ができますね。
<おおむね3歳~6歳の発達> 
☆全身のバランス能力が高まり、動きが巧みになってくる。
 ☆物や動植物の特質を知り、豊かな関わり方や遊び方ができる。
☆想像力も豊かになる。                 
☆仲間とルールを作り群れて遊ぶ。
☆自分の感情をコントロールできるようになる。      
☆社会事象や自然事象に対する認識も高まる。
                            【出典:幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説】

最後に・・・
3歳~6歳までの自然体験活動の意義(3つのポイント)
①自然の中の遊びを通して、心情・意欲・態度を育む。
②自然の中の遊びを通して、運動能力や体力向上を図ることができる。
③自然の中の遊びを通して、社会性や自然理解、畏敬の念を学ぶことができる。

<自然体験にて豊かに心情・意欲・態度を育むために> 
~タイミングを逃さず言葉をかけてください~
①できたことをタイミング逃さず認め褒めてあげる。
 例えば木登りが出来たら「よく登れたね!」と認め褒めてあげる。子どもは“できた”という自己有能感を育みます。
②結果にとらわれない。
 結果ではなく、挑戦をした過程を大切にしてあげる。「OK ここまでできたね!次もできると思うよ!」
③自然の中では、一人一人の興味関心が違うことを認識してください。
 10人いれば、10通りの自然の中での遊びがあります。多様な自然環境だからこそ、一人一人の遊びが保証されます!

~子どもと一緒に、たくさん自然の中で遊んでくださいね~
 

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「お手伝い」で伸びる子どもの自主性・自立性
NPO法人つくば市民活動推進機構 理事 鷲田美加 氏

 <お手伝いは子どもの成長に「いいね!」>
 みなさんは、お子さんにお手伝いをさせていますか? 家庭の中でのお手伝いの経験は、子どもの成長にとても大事だといわれます。子どもはお手伝いが大好き。お父さん・お母さんに喜んでもらえると、もっとお手伝いが好きになります。お手伝いは、子どもにとって初めての「人の役に立つ経験」です。自分の役割ができて、家族の一員であることを実感します。そして、責任感も芽生えます。
 実は、内閣府や民間の調査によると、日本の子どもが諸外国の子どもに比べ「自己肯定感」「自己有用感」が低い、という傾向があるのだとか。家庭の中でも、お子さんが「自分が役に立った」と思えるような体験を重ねて、子どもの自己肯定感・自己有用感をのびのびと育ててあげたいですね。
 
 <お手伝いのコツ>
 保護者の方に聞いた「お子さんにどんなお手伝いをさせていますか?」の第1位は、「食事の準備や片付け」でした。一方で、「子どもに食事の手伝いをしてもらうと時間がかかるし、散らかって大変!」と思うお父さん・お母さんも多いようです。そんな時は、小さなことから、
例えば、
1.レタスをちぎる
2.ちぎったレタスをお皿に配膳する
などからはじめてみませんか。汚れるのが嫌だなあ、と思ったら、あらかじめ床に新聞紙か、使い捨てのクロスを敷いて、その上でやってもらいます。終わった後は、新聞紙やクロスごとくるりとまとめてゴミ箱に捨てれば、お片付けもラクチンです。
 お手伝いのあとは、
「◯ちゃん、お手伝いしてくれてありがとう」
と声をかけてあげましょう。
子どもがちぎったレタスを食べる時は、
「◯ちゃんのちぎってくれたレタス、美味しいね」
と、子どもをたくさんほめてあげましょう。
 
<自主性・自立性アップ>
 最近は、子どもの習い事などや両親の仕事などで忙しく、子どもにお手伝いをさせない家庭もあるそうですが、お手伝いの先には、子どもの自立が待っています。自分のことを自分でやれるようになることで、自立心が大きく育ち、忍耐力もアップします。家族の役に立つことで、自己有用感もアップします。お料理が好きになると、中学生・高校生になって自分のお弁当を作ったり、家族のために食事を作ったり、独立した時にも料理で困ることは無くなるかもしれません。お子さんが小さな頃からお手伝いをさせていた先輩お母さんが、「お腹が空くと、自分で何か作れる子になったわよ♪」とおっしゃっていました。親としては嬉しい子どもの姿ですね。
 子どもは、いろいろな体験を通じて、自分の心の世界を広げ、自立への道を歩んでいきます。子どもが自立するために親にできること、「お手伝い」も大切な一つだな、と思うこの頃です。
 

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子どもが幼いうちは、母親は家にいるべき!?【パート1】
茨城キリスト教大学文学部児童教育学科 准教授 中島美那子 氏

自分の研究から紹介します。平成27年度、167名のお母様方にご協力いただき、子育てについての調査を行いました。そのアンケートの中で、このような質問をしました。
「子どもが幼いうちは母親が家にいて、子どもを育てるべきだと思いますか?」
すると、「とてもそう思う」と「どちらかというとそう思う」を合わせて76%のお母様が肯定するという結果となりました(図1参照)。
そしてその理由を伺うと、「子どもが寂しい思いをしないから」、「子どもとの絆が深まるから」、「自分も母親にそう育てられたから」という回答が上位になりました。
ここで注目したのは、実際にはお仕事などで子どもさんを保育所に通わせているお母さんの多くがこの質問に肯定していたことです。「本当は子どものためには家にいた方がいいのだろうけど、私はできていないな・・・」と思って回答していることが想像でき、現在の選択(実際の生活)に何か後ろめたさを感じている方がいるのでは、と気になりました。
そして話は変わりますが、先日、現在放送中の連続ドラマを見ている学生がこんなことを言っていました。
「母親が仕事にのめり込むと子どもが寂しくなって、先々夜遊びするようになったら大変だから(ドラマがそうらしいのです)、私は子どもが生まれたら仕事は辞めて家にいることにします」と。この学生の発言から、私たちは何か人生の選択をする時は、少なからず慣習やメディアの影響を受けることがわかります。
では、本当に「子どもが幼いうちは母親が家にいて、子どもを育てるべき」なのでしょうか。パート2ではこのことについて、心理学の分野ではどのような見解が出されているのかに触れたいと思います。
 
引用文献: 中島美那子・秋葉美奈子・飯田裕香里・金澤優(2015)「社会全体で子育て」は可能なのだろうか−母親の意識から−. 茨城キリスト教大学紀要49.pp.123-135.


図1 子どもが幼いうちは母親が家にいて、
子どもを育てるべきだと思いますか? (161人回答,167人調査)

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子どもが幼いうちは、母親は家にいるべき!?【パート2】
茨城キリスト教大学文学部児童教育学科 准教授 中島美那子 氏

『子どもの養育に心理学がいえること』(2001)という書籍があります。授業でもよく紹介するのですが、多くの信頼性の高い研究が載っています。今回のテーマに関連する研究もたくさんあり、それらの研究結果をまとめると、以下のことがいえます。
「子どもの成長に良い影響を与える母親(第一養育者)は、自分の役割に満足している人である。働いているかどうか、あるいは子どもと一緒にいる時間の長さはどうかということよりも、母親自身が満足しているかどうかということが子どもの成長に影響を与える」
たとえば、「ちょっと子どもと離れてリフレッシュ(満足)したら、その後は子どもに優しくなれた」という話をよく聞きますね。
もちろん子どもが「お母さんは自分のことを大切に思ってくれているのだな」という気持ちをもつことができるように接することは大事ですが、そこを押さえつつ、母親が自分の納得のいく人生を歩むことは、子どもにとって問題ないようです。問題がないどころか、子どもにとってプラスに働くということでしょう。
そうとはいえ、実のところ私自身も子育て中に「今の役割に満足!」と公言できたかと言えば、自信はありません。きっとここでいう「満足」とは、「まあ、OKかな」くらいで良いのだと思います。
子どもと離れたくないと思えば一緒にいても良いし、家にずっといるとカリカリしちゃうから外に出て働こうと思えばそうしても良いのだということを心理学の研究成果が示しています。
 
引用文献: H.R.シャファー(2001)子どもの養育に心理学がいえること.新曜社.

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子供のよいところを伸ばしましょう
県西総合病院病院長・小児科医 中原 智子 氏

 子どもの健康診断は集団で行うことが少なくなり、親が個別に医療機関を受診する自発的な行動となり、大きくなると保育園や幼稚園での健診に代わってきました。けれども、身体的な健診は受けても、細かな発達について診察を受ける機会はあまりありません。
 少子化で、同じくらいの年齢の子と比べることも少なくなってきました。
 そのため,日々の生活の中で、子どもについて困っていることがあっても、親としてはそれを障害として認めたくない気持ちが働き、自分の対応が悪いと思ってしまうこともあります。
 保育園や幼稚園に入り、刺激の多い子ども集団の生活になると、今まで家では気づかなかったことに気づかれることがあります。子どもは家族の手助けがないところで、一人で困っていることがあります。
 友達と遊べず一人でいることが多い、大人の言っていることがピンときていない、会話のピントがずれる、ちょろちょろしていてじっと座っていられない、思いつくとしゃべらずにいられない、どこかに行ったら駆け出して行ってしまい行方不明になる、初めてのことに対する抵抗が強い、順番が待てない、・・・。もともと気が付かれなかったものもありますが、その年齢になって初めて目立ってくる場合もあります。
 子どもが何をしたいのか、邪魔されて反抗しているのか、こだわりの部分はどこか等、よく観察してみましょう。行動パターンが見えたらそれを崩さないようにしてみましょう。やり方や順番が変わるときは、前からよく言い含めておきましょう。これで生活がスムーズになれば、あまり心配はいりません。
 子どもが使わないような大人びた難しい言葉を使う、相手に対して真実だけれど、その場で言ってはいけないことを言ってしまう、こだわりが強い、とても好む感覚や遊び等があれば自閉症の可能性があります。
 また,言葉で特定の行だけが聞き取りにくい場合があります。発音全体がはっきりしない場合もあります。
 これらの症状があるからといって、すべて診断が付くわけではありません。また、困っている程度もさまざまで、子どもによっても、家族によっても異なってきます。
 心配なお子さんでも、驚くほど短期間に発達する方もいます。また、年齢的にあるいは症状が軽く、はっきりとした診断を付けられない場合もあります。お子さんにどのような傾向があるのかを知り、軽い知的障害や自閉症、注意欠陥多動症等の場合もあるので、正しい診断のもとに経過を見ていくことが重要と思われます。一回の診察では診断を付けられないことも多く、経過を見ていくうちに困っている点がさらに明らかとなり、子どもの特性や家庭の養育環境も見えてきます。
 子どもの困っているところはできるだけ少なくし、よいところを最大限伸ばせるように、家庭と保育園・幼稚園、地域、医療機関の息の長い連携が大切です。

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子育てをするときに大切なこと
茨城キリスト教大学 准教授 飛田 隆 氏

子育てをするときに大切なことはたくさんありますが、ここでは3つのことについて書きたいと思います。
 それは、睡眠・食事・排泄の3つのことです。
 睡眠は寝ている長さより何時に寝たかも大切です。「早寝、早起き」の標語が昔から繰り返し伝えられています。早く寝ることは子どもの体や脳を育てるのにとても重要です。
 子どもにとって睡眠はとても大切なことは皆さんもご理解いただいていると思いますが、寝る前の環境についてはいかがでしょうか、寝る直前までテレビを見たり、ゲームをしていたりしますと子どもの脳は興奮したままでなかなか鎮まらないことがわかっています。寝る時間の1時間位前にはテレビ等を控えることが大切です。そうでないと寝る環境を保護者の皆さんが整えても子どもの脳が寝られない状態になったままになります。
 また強い光の下にいるとメラトニンと呼ばれるホルモン(睡眠ホルモンとも呼ばれています)の分泌が抑えられてしまいますのでなかなか眠りにつけないということになりますので、寝る前には照明をおとし暗めの部屋で過ごすことが大切です。
 次に食事に関してですが朝食についてお伝えしたいと思います。脳は栄養をためておくことはできませんので朝起きた時には脳の栄養が少なくなっています。少なくなった栄養を補うために朝食をとることはとても大切になります。朝食をとることで脳に栄養がいき目覚めが良くなります。
 しかしながら中には朝が苦手な子どももいて、皆さんが苦労することもあるかと思います。
 そこで初めのうちは食べやすい食事からはじめてもよいと思います。バランスの良い食事が大切なことは皆さんもわかっていると思いますが、食べてくれなくては、はじまりませんので食べやすい物から始めてもよいと思います。例えば果物、バナナ等は手軽に食べられますし子どもも好きな子が多いと思いますので食べてくれるのではないかと思います。そこにヨーグルトや牛乳をたすことが出来ればなおよいと思います。大切なことは食べ物を口に入れるという習慣を身につけることで、食に関する意欲がでて徐々に食べ物の種類を増やすことが出来れば良いと思います。
 最後に排泄です。ひとつのポイントは習慣化だと思います。各家庭の状況や子どもの体の様子も大きいと思いますが、朝、昼、夜と大まかに決めて決まった時間帯にゆっくりとトイレに入る環境を大人が整えることも大切だと考えています。また便秘になりやすい子どもには寝る前にコップ一杯の水と朝起きた後にうがいをしてから同じくコップ一杯の水を飲むことで排便を促す効果があります。
 以上3点ご紹介いたしましたが、出来そうなことからお試しくだされば良いと思います。

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生まれてきて良かったと思える子に育てるために【パート1】
認定こども園大野めぐみ保育園長 中西 三千子 氏

<自己肯定感のある子に育てる>
「いいところも悪い所もみんな受け入れられ愛されている」「そのままのお前でいいんだよ」これが伝われば子どもは輝きます。自分は大切な存在だ・生きている価値があると思える子に育てることが親の家庭の役目ではないでしょうか。
自己肯定感を育てるために,次の10項目が大切だと思います。
①スキンシップ ②ご飯を作る,一緒に食べる ③一緒に遊ぶ ④泣いたらよしよしする ⑤子どもの気持ちを汲んで言葉にして返す ⑥子どもの話を聴く ⑦絵本を読む ⑧子どもを丸ごと褒める ⑨頑張れより頑張っているねの言葉をかける ⑩ありがとうの言葉をかける  
自己肯定感の低い人は,お金があっても勉強ができても良い会社に勤めていても苦しい人生と感じ,反対に高い人は,なくても幸福感を感じるのだと思います。
<子どもの話を聴くときは>
・子どもの話している時間より,自分の話している時間を短くしましょう
・目を見て大きくうなづいて「そうか,そうか」「○○なんだね」と聴きましょう
<褒め方> 
・褒めるとは,子どもの頑張りや成長を見つけて喜びを伝えること 
・できないことよりできているところに注目しましょう。
・できて当たり前ではなくできなくて当たり前
・比較するなら以前のその子と

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生まれてきて良かったと思える子に育てるために【パート2】
認定こども園大野めぐみ保育園長 中西 三千子 氏

<叱り方> 
・叱るとは,子どもが自分も他人も大切にできるように教えること
×「ほんとにお前はダメなやつだ」と人格そのものを否定せず行為で叱る
・子どもを止めて目を合わせてきっぱりと。はっきり,短く,具体的に
・「○○してはだめ」よりも「○○しようね」
・「あなたはどうして○○なの」あなたメッセージではなく,「私は○○してほしいと思ってる」と私メッセージで
・注意は根気よく繰り返して
*体罰は百害あって一利なし 体罰された子は①攻撃性が強くなる(乱暴)②反社会的行動にでる(万引き・破壊)③精神疾患を患う と言われています。
<早起き・早寝・朝ごはん>
幼児期は生活リズムを整える大事な時期です。成長ホルモンもたくさん出ます。夜寝ている間にはメラトニンというホルモンが脳内に出て思春期まで第二次成長を抑える働きがあります。メラトニンの敵は光,夜更かしはイライラや低体温,朝食欠食を引き起こします。朝はカーテンを開け日の光を入れ子どもを起こし,夜は寝かしつけることが大切です。あわただしい子育て中だからこそ寝る前に絵本を読み(「ねないこだれだ」は効果的。)絵本を読んだら寝る習慣をつけてはいかがでしょうか。「寝ない子の所には蛇が来るよ,お化けがくるよ」なんて昔から家庭の中で寝かしつけていた方法が良いのです。
<家庭の中でお手伝いをする機会を与えましょう>
家庭の中の伝承は子どもを育てます。自主性・積極性は4歳までに育つといわれています。自分で考え行動していく力はお手伝いの中からも育まれます。手伝ってくれたら必ず「ありがとう」も忘れずに!

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