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「おしえて ふれあちゃん!」特設ページ(帰国編)

 北澤佑子教諭が南極での活動を終え、2020年3月20日に日本へ帰国されました。現地での活動や生活の様子など、貴重なお話しを伺いました。

 

 

1 南極での生活

 

 

しらせから望む風景
▲しらせから望む風景

-南極に向けていざ出航!

 航海中は、刻一刻とめまぐるしく景色が変わっていくので、ずっと眺めていても全く飽きることはなかったです。ほぼ毎日、南極の海を一望できる艦橋に通い、南極を感じられる喜びをかみしめていました。カメラに収まりきらないほど大きい氷山や氷の上でゆったりしているアザラシ、海氷に写る南極観測船「しらせ」の姿など氷を砕きながら進んでいる船上で南極の世界を肌で感じ、目の前に広がる南極の自然に常に感動していました。心の整理が追いつかなくなるくらい、感動でいっぱいでした。

 往復で約3か月間の船上生活。電気整備専門の隊員と医療隊員の医師が美容係となり、伸びた髪を切ってくれました。船上ではテレビもインターネットもつながりません。観測隊の部屋は二人部屋で、共に過ごした相方とは一緒に自然を見たり、おしゃべりをしたり、運動したりして、共有する一つ一つの事が大切で、どれもかけがえのない時間でした。今もこの絆は続いています。

 夕方の定刻に人員確認も兼ねたミーティングがあり、報告や連絡事項が伝えられます。61次隊ならではの事があり、それは拍手です。仲間の成功や喜び、願いなどをみんなで共有するという想いが表れた拍手なのです。

 

-航海を終え、昭和基地に到着。日本とはまるで違った環境での生活

 昭和基地は海氷に囲まれています。私が行った季節は夏。夏の南極は一日中、太陽が沈まない白夜。夜が来ません。空は常に明るいので、時計を見ないと時間がわからず、身体のリズムを整えることが大変でした。

 一日の流れは朝6時に起床して、7時に朝食、毎日みんなでラジオ体操と朝礼、その後各自仕事をし、19時ごろに夕食、全体ミーティングを行い、23時ごろに消灯です。食事は、寒い中で活動するので多くのカロリーが必要で、朝昼夕3食の他に、パンなどの中間食が2回あり、1日5食。献立表を見ることが楽しみで、金曜はカレーの日、9が付く日は肉の日。生野菜は貴重でした。

 

-南極での観測活動。貴重な体験をする中で命の危険を感じることも

 基地からヘリコプターで南極大陸や露岩域(※氷床から岩が露出している地域)に行き、野外泊しながらの観測へも参加しました。吹雪で人や機材が吹き飛ばされそうになる中、みんなで必死に観測を続けたこともありました。

 もっとも恐怖を感じた日。それは、見渡す限り白一色の南極大陸でのことです。猛吹雪が襲来し、外にあるトイレへ行くのも命懸け。視界が悪くて周囲もほぼ見えず、これを離したら二度と仲間のもとに帰れないかもしれないと思い、ライフロープをつかむ手が震えました。

 基地で生活する上で義務付けられていることがいくつかあります。その一つに、「無線機を必ず常時身に着ける」ということがあります。無線で連絡が取れないときは、遭難とみなされます。私にとって無線機は、単なる通信手段というだけでなかったです。離れた場所にいても、無線機から聞こえてくる隊員たちの声を通して想いを共有でき、仲間とつながっているという安心感も与えてくれる存在でした。

 

 -南極の生き物に癒やされる時間も

好奇心旺盛なペンギンたち
▲好奇心旺盛なペンギンたち

 常に危険ととなり合わせの南極ですが、観測中にふと後ろを見ると、ペンギンが両手を広げて私に近づいてくることもありました。私の方が尻込みするぐらい好奇心旺盛で人間に興味津々な様子は、本当に可愛かったです。

 


2 「南極魂」とは

-支え合い、協力し合うこと

 観測隊には各部門のプロフェッショナルな隊員がいますが、限られた人数でさまざまなことを行うために、協働することはとても大切です。海上自衛隊の乗組員の皆さんも、観測隊の皆さんも全員がワンチームの志を持って支え合い、南極での観測や生活を支える輸送や建築作業、その他の活動もすべて協働して行います。

 基地では、掃除やゴミ出しなどを行う「当直」を輪番で担当します。学校でいう日直のようなもので、日誌も書きます。当直の私が、皿洗いをしていると、ご飯を済ませた隊の皆さんが、「アルバイトに入ります!」とたくさん声をかけてくれ、一緒に皿洗いをしてくれました。

協力して活動する
▲協力して活動する

 さまざまな仕事をしている仲間の姿を目の当たりにする中で、私は自分にできることは何かないかと自発的に考えるようになりました。

 海上自衛隊の乗組員の皆さんや観測隊の皆さんとの共同・協働生活が一番心に残っています。互いの命や人生を預け合い共に生きる、お互いを信じ合わなければ生き抜けない場所が南極なのだと思いました。

 

 

-人と向き合い、共に創り上げる

 南極授業をしながらも私は妹のことが気になっていました。この日に体調を整えて会場に来ていた妹は、施設の方に支えられながら車いすに乗り、私を見ていました。南極授業が終わった後、妹と衛星回線で話す時間をいただいたのですが、隊の皆さんが画面に入りきらないぐらい集まって、妹の誕生日を祝ってくれました。私は嬉しかったです。

 南極で生きていくためには、決して他人事にはしない、他者の幸せを願い、共に幸せを創って共有していける、そんな一人一人の仲間と共に生きる素直な心が大切。その心、『南極魂』を感じました。日本にいるとき以上に、人と人とのつながりの中で生きていることを強く実感しました。

 

3 学びを生かし、伝えていく

-日本に戻り、南極での体験や学びを伝える

 南極での活動中、細かい指示命令はなく、どんなプランでどう過ごすかはその人次第なのです。南極では肩書きより人間として中身が問われたように思いました。これは、教師の仕事も同じだと思います。生徒は純粋で鋭く、私の言葉よりも行動をよく見ています。失敗も多い私ですが、「しゃべりは下手なところもあるけれど、楽しそうに話す先生を見ていると、こちらもワクワクする。一生懸命さが伝わっているよ」と生徒から言われたりすると、嬉しいものです。

 また、帰国してから地元の茨城県筑西市で写真展を開催させていただきました。来場された皆さんと交流でき、充実した時間を過ごすことができました。南極での写真や実際に使用した観測機材や南極海で採集したプランクトンなども手に触れてもらうことを通して、南極での活動についてお話しました。そのとき、子どもたちは南極に興味津々で、質問攻めでした。南極海の豊かな生態系やあたたかい海水の存在にもとても驚いていて、南極をテーマに自由研究をしたいという子や、将来は南極観測隊になりたいという意欲的な子もいました。改めて、将来を担う子どもたちの探究心を高め、世界観を広げるきっかけにつなげていけるよう南極での経験を還元していきたいと強く思いました。

 

 野外で活動する際にかかせないヘルメット

 ▲野外で活動する際にかかせないヘルメット

南極の海水を熱心に見つめる

  ▲南極の海水を熱心に見つめる

-日常生活にも生きる、南極で学んだ相手を思いやる気持ち

 ちなみに、観測隊の中での合い言葉がいくつかありました。その中の「備えよ、常に」と「ご安全に」という言葉。

 南極ではお店もないし、救急車や消防車もありません。限られた環境の中で仲間と共に観測や生活をしていきます。だから、あらゆる事を想定して準備を徹底的に行うことが重要。そして、安全に遂行することが最も大切なことです。

 朝礼の際にペアで行う安全点検も気が抜けません。その朝礼の最後も、すれ違った隊員同士も、お互いに交わす「ご安全に」という言葉には、相手のことを思いやり、安全を願い、共に生きて無事に帰ろうという思いが込められています。このような南極での精神は、帰国した今も常に心に留めています。

活動前には入念な準備・確認を行う

▲活動前には入念な準備・確認を行う


4 夢に向かう原動力

 -挑戦し続けることができたのは、家族がいたから

 筑波大大学院のときに、過去に南極地域観測隊の隊員だった教授の講義を受け、南極の映像を見せてもらい「教員南極派遣プログラム」というものがあることを知り、いつか自分も行ってみたいという気持ちが芽生えました。教師になり、南極について調べていくうちに国立極地研究所に関する記事で「南極では科学も育てるし、人間も育てる」という言葉に心が動かされました。南極には、「科学」にとっても「人」にとっても、そして「教育」にとっても、大切なものがあると考え、子どもたちの成長に携わる立場の教師として、行ってみたいという気持ちで選考を受け、3回目の挑戦でようやく実現しました。

 私には5歳年下に難病を持つ妹がいて、私が子供の時から、とにかく家族全員で一緒に生きる、「共に生きる」ことが家族の目標でした。また、南極に行くに当たって、気がかりなことが1つありました。それは私が冬訓練に行く前に、肺がんの手術を受けた母のこと。心配のあまり南極行きを諦めようとさえ思いました。しかし入院先のベッドで母は「南極はあなただけの夢じゃない。家族の夢でもあるんだよ。佑子はしっかり任務を果たしてきてほしい」と目を潤ませながら言い、私は勇気づけられました。必死に生きる妹や母の姿から、私は生きる力を学びました。夢を持ち、悩み、夢に向かって努力できること、そのすべてがありがたいことだと考えるようになりました。これが私の生きる原動力です。

 

-夢に向かって努力しているみんなへ

 今回、私が南極に行くことができたのも、南極での活動や帰国後の活動などができていることも、私一人の力ではなく、応援してくれる多くの人たちがいるからです。

 私たちは、人と人とのつながりの中で生きています。人と人との縁に感謝して、一日一日を大切に生きてほしいと思います。いろいろな考えや価値観がある中で、共に生きる社会だからこそ、相手を理解しようという素直な気持ちがとても大切です。

 また、夢を叶えたいと思ったら、人と人との縁に感謝しながら、強い覚悟をもって進んでほしいと思います。

 

5 新たな夢に向かって

 南極から帰国した私を守谷高校の生徒は「南極せんせい」と呼んでくれます。南極で体験して感じたこと、学んだこと、南極での観測の意義と重要性、さらに観測に関わる人たちの情報を多くの皆さんに発信していくことが私の任務です。

 私が南極で感じた『南極魂』を生徒たちにも直に感じてもらいたい。引率教員として、将来を担う高校生を南極へ連れていくという新たな夢が生まれました。

 最後に、一番支えて応援してくれた家族、特に妹に感謝したいです。

 

6 関連情報

 

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