茨城県教育委員会へようこそ学校教育生涯学習・家庭・地域教育芸術文化・スポーツ困ったときは(よくある質問)・教育相談窓口
ホーム >  茨城県教育委員会へようこそ > 教育広報 > スペシャルインタビュー > 東京大学 先端科学技術センター 西成 活裕さん ~思いやりの社会を数学で証明したい~

東京大学 先端科学技術センター 西成 活裕さん
~思いやりの社会を数学で証明したい~

      

 

      西成 活裕さん1

 

 

 渋滞の少ない茨城県土浦市で育ち渋滞が嫌いだった西成 活裕さんは、渋滞の仕組みや解決法を数学的に解明する「渋滞学」を生み出しました。
 「学校の勉強なんて、大人になってから何の役に立つの?」 定番の質問を西成さんにぶつけてみました。

 

「考え方」を学んだ少年時代

ー子供の頃はどんな子供でしたか。何をするのが好きでしたか。

 

 比較的一人でじっくり考えるのが好きでした。空を見上げながら宇宙とはどうなっているのか、蟻を見ながらどうして一列に歩けるのか、身近な物を見て考えるのが好きな少年でした。

-好きな科目などはありましたか。

 

 一番理科が好きで、あとは算数が好きでした。それ以外でも、国語でいろんな人の人生を学ぶことが好きでした。暗記は苦手で嫌でしたが、人が好きなので、歴史の授業でもいろんな人物がこうやって生きてきたのか、と知るのが好きでした。わりと嫌いな科目はなかったですね。いろいろ興味を持ってやっていた少年時代でした。

 

西成 活裕さん2


 

-数学でも読解力が必要だと聞きますよね。

 

 考えるのが好きだったので、数学って考えることが結構多いじゃないですか。ここはどうなっているのだろうとか、特に文章題でひもといていくのが比較的好きだった。単純なのは逆に好きじゃない。私にこんな計算をさせないでくれと思ったりしました。
 

-印象に残っている先生はいますか。

 

 ぱっと思いつくのは怖かった先生ですね。例えば去年亡くなられたのですけれど、中学校の時の社会の小野先生。非常に怖かったけど、ある意味で熱い、いい先生でした。分からないことを質問しに行くとものすごく親身にしてくれて、「次授業があるけれど…」といいながらそれも忘れてずっと説明してくれました。大人になって小野先生に会った時に「あのとき先生怖かったんですよ」と懐かしく語ったりとか…。

 

-授業など学校での思い出はありますか。

 

 小学校の算数の時間ですけど、計算の時、タイルを使ったり布を使ったり、円周率の勉強では丸い缶みたいなのを測ったり。ものを使った授業っていうのはすごく思い出に残っています。
 本当にこういう風になっている、本当だ~といった実感がありました。先生に言われてやってるのと、自分で納得してやっているのと違っていて、そういう授業が好きでした。

 

-学校で学んだこと、学校生活で得た経験で、現在役に立っていると思うことはありますか。

 

 学校という集団生活の中で生きていく中で、自分の主張だけ通していくのは駄目な訳で、みんなの中でバランスを取っていく必要がある。学級委員長をやったことがあるのですけれど、教室の中で何十人をまとめていくというのはすごく難しいです。それは今でも覚えています。文句を言われたり、けんかになって泣いたり、そういうのは社会生活という勉強になりました。

 

 勉強という意味では、ものごとを考えていく道筋、例えば天秤でも重さを量るにしても、速さを測るにしても、こういうプロセスでやっていけば正解に辿り着くんだという考え方、ロジックは聞いていて楽しかった。
 訳の分からないものに対して、料理の仕方を教わったというのでしょうか。自己流でやっていた人間なので、スタンダード、標準的な方法でこうやるんだみたいことをたくさん教わったのは嬉しかったですね。
 感動したのは、例えばピタゴラスの定理で、こことここを足して二乗するとこれの二乗と同じになるってどうやって発見するのかと思いながら、スッゲーって言ったのを覚えています。

 

 学校の中で教わるのは、古人の先人達が築き上げた偉大な知恵です。それをぱっと受け取っている自分というものに感動しますね。後から思えば。

 

「学校の勉強なんて、大人になってから何の役に立つの?」

-親や学校の先生は、よく子供から、「学校の勉強なんて、大人になってから何の役に立つの?」と聞かれます。この質問に対し、西成先生はどう思われますか。

 確かに、研究者になって実際に知識を使うのは直接役に立っているけど、ほとんどの場合は別に学者になるわけではないので、直接役に立つことは少ないと思いますよね。でも、考え方、難しい問題に対して、こういう風に分解して、こういう風に積み上げていくとこうやって答えに達するといったその考え方は、実は国語算数理科社会と同じなんですよ。

西成 活裕さん3


 昔の武将はこういう風に考えてこうやったとか、あるいは社会のこういう問題をこう考えるとか、数学でもこの問題をこうやって分解して、場合に分けて解いていくとか、そういう考え方のロジックっていうのは、これは全部に共通ですから。学校で教わる考え方のベースになる部分は、生活の全てに役に立つ。普段の生活で何をやっていたとしても、間接的に絶対影響を及ぼしています。表面的には役に立たないように見えるけど、実は違うんですね。深いところで見たら役に立たない物はないと思う。「考え方」というのは先人達が苦しんで悩んで築き上げてきたもので、それは貴重な宝物だと思います。

 

-一見役に立つとは思えない学校の勉強が、実社会の役に立っている例を教えてください。

 

 例えばGPSがそうです。携帯電話、スマートフォンで子どもたちが持っていると、「見守りサービス」などでどこにいるかとか正確に分かりますよね。これなんか色々な数学とか学校で勉強したいろんな人類の知恵が詰まっているんです。一見役に立たないといっていたのが、お子さんの安全を知ることに役に立っているじゃないですか。色々な技術の背後には、学校で役に立たないと思われていたものが使われています。

 

 あと家庭の中でも無意識に使っているんです。例えばテーブルがあって、その上の端っこに子どもが立とうとすると、「危ないわよ」ってお母さんが言うわけですよ。それって物理とかの感覚がある人なんですよ。物理を勉強していた人は、こうすると倒れるっていう感覚があって、難しい言葉で言うとモーメントって言って、やじろべぇの原理と同じものを習っているんです。その感覚がある方は、家庭での事故を防げるのです。役に立っていないといっても無意識に実は使っている。「そんなところに置いたら倒れる」というのは、ぱっと状況を見てすごく不安定な力学的な計算をやっているんです。無意識の底に沈んでいるので、みなさん使っていても気付かないのが本当のところじゃないですかね。

 

 技術としてはインターネットなどもそうです。そういうものは全部、学校で習った人が技術者になって開発しているんです。全てが間接的に影響を及ぼしあっているんです。

 

-西成先生の生み出した「渋滞学」は、数学が社会の役に立つわかりやすい例だと思います。渋滞について研究したいと考えたきっかけは何ですか。

 

 小さい頃から茨城県にいて、混雑で困ることがなかったのですけれど、小学校2年の時に渋谷に行って、渋谷のハチ公前で待ち合わせたら、突然気分が悪くなって倒れたんです。病院に行って脳とかを調べたけれど普通なんですね。きっと混雑のストレスではないか、はじめて人ごみを見た時に、なにかとてもストレスになって、体がそういう反応を起こしたのではないかって言われて、つまりそれくらい私は混雑が嫌いだった。混雑を避けよう避けようとしていた自分が、ある時、水とか空気の流れを勉強していたんです。水とか空気の流れは非常に古い分野なので、もっと新しいことをやりたいなという気持ちと、渋滞が嫌いという気持ちがある時に手を結んで、数学を使って人とか車の流れが研究できるのではとひらめいたんです。24、5歳のことでした。人生これだと思って、それに賭けて、渋滞学というものを勝手につくったんです。ずっと突っ走って。そういう感じです。

 

 渋滞というキーワードを中心に、最初は車だったんですけど、それ以外のもの、蟻さんとか仕事の渋滞とか、色々なものを「渋滞」というキーワードから研究しているのが今までのスタイルで、楽しんでやってます。

 

-研究で苦労したことなどを教えてください。

 

 今まである研究をなぞっていくのは簡単なんです。勉強とはある意味なぞることです。ところが新しい研究というのは、歩いていたレールが突然なくなって、下手したら蛇に噛まれるかも知れない荒野を歩いて行くようなものです。道なき道を行く苦労というのは知らなかったので、最初は苦労しました。何をやっても計算が合わなかったりとか、あと発表しても認められないとか、そういうのが7年ぐらい続きました。その7年間苦労した中で、挫折しそうになったけど、いろんな人に助けていただいて、声を掛けていただいて、勇気づけられて、やっと8年目ぐらいから楽しいといういか、研究が回り始めた。新しい未来をつくる、自分でつくったという思いがあって、それってでも口ほど簡単ではなかった。7年苦労しました。

 

 

思いやりの社会は住みよい社会=数学で証明?

 

-今後、研究を進めていくことでどんな社会を実現したいと考えていますか。

 

 研究の中で、渋滞を解消したいということと、自分だけ早く行きたいということは両立しないことが分かりました。最近では人同士のつながりが弱くなっているんですけど、結びつきが強くなり、もっともっとお互いが思いやる温かい社会になってくると、渋滞が減るんです、実は。そういう社会づくりを目指していきたいですね。それを数学的にバックアップして、本当にこうやるといいんだよっていうのを証明して、じゃあ互いに思いやった方が結局トータルで得になるんだというのがみんなわかると、世の中が変わっていくんじゃないか。そういう思いやりの社会にしたいです。

 

-今、勉強をしている子供たちにメッセージをお願いします。

 

 最近、試行錯誤することは無駄で、効率よくやろうという風潮がありますが、世の中に無駄なこと、無駄な勉強はないんです。絶対に何かに役にたつんです。例えば、受験に関係ないから家庭科はいらないと言う人もいます。だけど私ね、大学の2年の時に、下宿で一人で倒れたんです。家庭科で習った粉ふきいもの作り方を覚えていて、それで命を長らえたんです。どっかに役に立つんです。無駄な勉強はないから、若いうちは、幅広く勉強していくことが大事だと思います。

西成 活裕さん4

 

西成 活裕さんのプロフィール

西成 活裕(にしなり かつひろ)
東京大学先端科学技術センター教授

 

土浦市立神立小学校、土浦第五中学校、県立土浦第一高等学校卒業
1986年 東京大学理科一類入学
1990年 東京大学工学部航空学科卒業
1995年 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了 博士(工学)
1999年 龍谷大学理工学部数理情報学科 助教授
2002年 ケルン大学理論物理学研究所(ドイツ)にて客員教授
2005年 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 准教授、2009年同大学教授
2009年 7月~ 東京大学先端科学技術研究センター教授

 

著作

「渋滞学」(新潮選書:講談社科学出版賞など受賞)、「無駄学」「誤解学」(新潮選書)
「思考体力を鍛える」(あさ出版)、「疑う力」(PHP新書)
「とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学」(日経BP社)など多数


お問い合わせ

〒310-8588 茨城県水戸市笠原町978番6 茨城県教育庁 総務企画部 総務課[県庁舎22階]

電話 029-301-5148・5152(調査・広報担当)  FAX 029-301-5139

E-mail kyoikusomu@pref.ibaraki.lg.jp