社会の変化や生徒の能力・適性等の多様化に対応する学校・学科の在り方について
 
 本審議会は,平成10年8月に県教育委員会から「生徒減少期における県立高等学校の質的充実を図るための学校の適正規模・適正配置について」及び「社会の変化や生徒の能力・適性等の多様化に対応する学校・学科の在り方について」の諮問を受け,昨年度は,「生徒減少期における県立高等学校の質的充実を図るための学校の適正規模・適正配置について」を審議し,1学年当たりの学級数や学校の配置等について平成11年4月に第1次答申として県教育委員会に提出したところである。
 今年度は,「社会の変化や生徒の能力・適性等の多様化に対応する学校・学科の在り方について」を審議したが,高等学校等進学率の上昇に伴い,能力・適性,関心等が多様な生徒を受け入れるようになった高等学校の現状を踏まえるとともに,学校・学科制度の充実に重点を置き,先に提出した第1次答申を念頭におきながら,慎重かつ活発に審議を重ね,下記のとおり成案を得たので,報告するものである。
 ついては,本答申が第1次答申と深い関連のもとに審議された結果の報告になっていることに留意しながら,今後,県立高等学校の将来構想が策定されることを期待するものである。
 
 
 今日の高等学校が国民的教育機関として定着するに伴い,能力・適性,興味・関心等の多様な生徒が高等学校に入学してくる状況にあり,これまでの高等学校教育のシステムでは対応しきれない状況が生じてきている。また,今日の社会においては,国際化,情報化,科学技術の発展,高齢化・少子化,経済構造の変化など,高等学校教育を取り巻く環境が著しく変化している。
 高等学校教育には,このような社会の変化に的確に対応するとともに,多様化した生徒の能力・適性,進路等に即した教育を行うことが求められている。
 これらを実現するために,平成3年4月の中央教育審議会答申では,今後の高等学校教育の在り方を考えるに当たって,重視していく視点として,「量的拡大から質的充実へ」「形式的平等から実質的平等へ」「偏差値偏重から個性尊重・人間性重視へ」を挙げた。文部省は,この答申等の趣旨に沿って制度改正を行い,全日制課程の単位制高等学校の開設,総合学科の設置,学校間連携の実施等を可能としたところである。
 さらに,平成9年6月の中央教育審議会第二次答申では,中学校と高等学校間の接続の改善を図る必要があるとの認識に立ち,その一つとして中高一貫教育の選択的導入を提言し,それを受けて,文部省は制度改正を行い,中高一貫教育の実施を可能としたところである。
 本県においては,これまでも,このような状況に対応するため,学科の改編,単位制高等学校の開設,総合学科の設置などが進められてきたが,今後においても,より一層進むであろう社会の変化や生徒の多様化に対応する教育を行っていくことは重要な課題であると考える。
 本審議会は,「社会の変化や生徒の能力・適性等の多様化に対応する学校・学科の在り方について」の諮問を受けたところであるが,審議に当たっては,国の動向を踏まえるとともに,中学生の進路状況や学校・学科の編成状況など本県の実情を考慮しながら専門的に調査・研究を進めた。
 
 
 
1 普通科
 
 普通科については,高等学校教育における基本的な学科ととらえ,まずは,普通教育全般に関する基礎的・基本的な内容の定着に重点を置く必要がある。さらに,各高等学校においては,画一的な教育ではなく,生徒の個性の伸長が図れるよう,教科・科目の選択ができる弾力的な教育課程の編成を行い,教育内容に特色を持たせるとともに,指導方法の改善・充実に努める必要がある。
 その際,進学を希望する者に対しては,進路目標を着実に実現させるための教育課程をなお一層充実させ,生徒のニーズに応える必要がある。また,就職を希望する者に対しては,生徒の実態に応じ,働くことの意義,喜び,楽しさや厳しさを学ばせ,将来の職業生活を送るための基礎的な知識や技術・技能を身に付けさせるための教育課程を充実させ,生徒の社会への適応力を高める必要がある。
普通科の配置については,専門学科及び総合学科の配置とのバランスを考慮しながら,中学校卒業者の普通科志向に応えていくことが望まれる。
 なお,本県では,これまで,普通科の特色づくりの一つとしてコース制をとる学校を設置してきた。このことは,生徒の多様な要望に応えるとともに,専門科目の学習をある程度可能としたことにおいて,一定の役割を果たしてきたが,最近,コースによっては,中学生の志願状況が低い傾向にあること,教育内容が普通科のそれと差がなくなっていることが見受けられるため,このような場合には,配置も含めてコースの在り方について検討する必要がある。
 
 
 
 
2 専門学科
 
 (1) 職業教育に関する専門学科(職業学科)
 
 本県においては,専門学科のうち,職業学科として,農業に関する学科,工業に関する学科,商業に関する学科,水産に関する学科,家庭に関する学科,厚生(看護)に関する学科が設置されており,これまでも,中堅技術者,事務従事者など有為な職業人が育成されてきた。
 近年では,農業に関する学科においては環境緑地科,工業においては情報技術科,商業においては情報処理科,水産においては海洋技術科,家庭においては教養福祉科などの学科が設置され,時代の進展に対応した職業教育が展開されているところである。
 一方,ますます進む技術革新や職種の多様化等に伴い,今後の職業教育に期待されることは,将来のスペシャリストとして必要とされる専門性の基礎的・基本的な知識・技術を重点的に習得させ,生涯にわたって幅広い分野で活躍できる人材を育成することであると考える。
 したがって,職業学科については,産業社会の動向や地域と生徒の実態を踏まえ,学科の在り方について検討する必要がある。
 その際,例えば,バイオテクノロジーや環境制御などの農業の技術革新に対応した学科,生産の自動化や情報通信技術の高度化などの技術革新に対応した学科,経済の国際化,情報化,サービス化の進展に対応した学科,水産増養殖に対応した学科,調理師の養成を目指す学科,社会福祉業務者の養成を目指す学科,地場産業に関連する伝統的技能後継者の養成を目指す学科,観光・旅行業従事者の養成を目指す学科の設置について検討するとともに,既存の職業学科においても,時代の進展に対応できるよう教育内容について充実を図ることが望まれる。
 なお,これまで家庭に関する学科に位置付けられている福祉関連学科については,社会福祉分野で活躍できる人材の育成を促進するため,平成15年度から学年進行で実施される新高等学校学習指導要領で新設された専門教育に関する教科「福祉」の各科目を重点的に履修できるよう,福祉に関する学科として位置付けることが望まれる。
 また,厚生に関する学科については,衛生看護科を設置し,准看護婦(士)の養成を行ってきたところであるが,国において准看護婦養成制度の在り方の検討がなされたことから,今後の法改正の動向を踏まえ,本県における望ましい衛生看護科の在り方について検討する必要がある。
 職業学科の配置については,他の学科の配置とのバランス,地域の実情等を勘案して検討する必要がある。
 
 (2) 職業学科以外の専門学科
 
 本県においては,職業学科以外の専門学科として,理数科,美術科,音楽科及び国際科が設置されている。
 理数科及び国際科については,中学生のニーズが変化していること,かつ,それらの学科の教育内容が普通科のそれと類似していることから,今後の学科の在り方について配置も含めて検討する必要がある。
 美術科及び音楽科については,それぞれの学科で学ぶ生徒の目的意識がより明確なことや卒業後の進路状況を勘案すれば,基本的には,現状を維持することが適当と考えるが,美術科については,希望する生徒が通学できるような配置を検討する必要がある。
 
3 新しいタイプの学校
 
 (1) 全日制課程の単位制高等学校
 
 平成7年2月の茨城県高等学校審議会は,学年の区分によらない教育課程を採用し,生徒の能力・適性,興味・関心,進路等に応じて個を生かす学習の推進並びに進路変更等による中途退学者及び転編入学を希望する者に対応できる単位制を全日制課程の普通科に導入すること,設置校数については各通学区ごとに設置することが望ましい旨の答申を行った。
 これを受け,本県においては,平成10年4月に1校開設したところであり,目標をもって主体的に学習しようとする生徒が多数入学している状況にある。
 今後の高等学校の在り方としては,多様な生徒に対応するため,教科・科目の選択幅を拡大し,個に応じた教育課程の履修を促進する必要があることから,平成7年2月の茨城県高等学校審議会答申に沿って,中学生の学校選択幅の拡大や生徒の個性を生かした進路希望の実現を図るためにも,速やかに各通学区ごとに設置する必要がある。
 なお,単位制導入の趣旨は普通科も専門学科も同様であること,また,平成15年度から学年進行で実施される新高等学校学習指導要領では,専門学科における専門教科・科目の必履修単位数が削減されることにより,これまでに比べ生徒が特性,進路等に応じて選択できる科目の選択幅がやや広がることから,この際,専門学科にも単位制を導入することが望まれる。

 (2) 総合学科の高等学校
 
 今日の社会は,急速な発展に伴い多くの事柄について選択の幅が広がってきていることから,青少年が将来の生き方を考え決定していくことが先送りされる傾向にある。
 このような背景のもと,現在,高等学校にはほとんどの中学生が進学してくる状況にあり,中学校卒業時において自己の将来の進路について明確な見通しを持たないまま高校に入学してくる生徒も増えていることから,平成7年2月の茨城県高等学校審議会は,入学後に自己の進路への自覚を深めさせることは重要であるとの認識に立ち,幅広く開設された普通科目及び専門科目の中から,自己の適性,関心等に応じて科目を履修することにより,将来の進路選択を視野に入れた学習を行うことが可能である総合学科を,本県においても設置することは意義深いものがある旨の答申を行った。
 これを受け,本県においては,平成10年4月に1校設置したところであり,入学後の状況を見ると,進路希望に応じて科目選択がより可能である総合学科に魅力を感じて入学してくる生徒が多い実態にある。
国においては,平成11年1月に閣議決定した「生活空間倍増戦略プラン」の中で,多様な生徒の実態に即し,個性的な学校づくりを行うため,当面,総合学科を設置する公立高等学校が通学範囲に少なくとも1校整備されることを目標にする旨の施策を発表しているところである。
したがって,入学後に自己の将来を深く考え,自分で将来の進路を決定できる総合学科の果たす役割は大きいものがあるため,平成7年2月の茨城県高等学校審議会答申や国の整備方針に沿って,速やかに各通学区ごとに設置する必要がある。
 
  
 (3) 中高一貫教育校
 
 平成9年6月の中央教育審議会第二次答申の中で,中高一貫教育は,中学校教育と高等学校教育を接続することにより,生徒が高等学校入学者選抜の影響を受けずにゆとりのある安定した学校生活を送れること,6年間の計画的・継続的な教育指導が展開でき効果的な一貫した教育が可能となることなどの利点を持つことから,中高一貫教育を享受する機会をより広く提供していくことが望ましく,これまでの中学校・高等学校に加えて,子どもたちや保護者が中高一貫教育をも選択できるようにし,中等教育の一層の多様化を推進するため,中高一貫教育の選択的導入を行うことが適当である旨の提言がなされ,これを受け,文部省は平成10年6月に制度改正を行ったところである。
 本県においても,国の動向を踏まえ,子どもたちが,ゆとりある学校生活を送る中で,様々な試行錯誤や体験の積み重ねを通じて豊かな学習をし,個性や創造性を存分に伸ばしていくことをより可能とする中高一貫教育校を,子どもたちや保護者のニーズ,地域の実情等を勘案しながら,設置する必要があると考える。
 その際,中高一貫教育においては6年間にわたるゆとりを十分に生かすことが求められていることから,実施形態として中等教育学校,併設型,連携型のうちいずれを採用するのか,また,中高一貫教育校に具体的にどのような特色を持たせるのかについて配慮する必要がある。
 中高一貫教育校の設置に当たっては,中学校段階から高等学校段階へと進むにつれて,ますます多様化する生徒の能力・適性等に対応するため,単位制を導入することや総合学科を設置することについて検討することが望まれる。

4 定時制課程・通信制課程
 
 定時制課程は,本来,中学校を卒業して勤労に従事するためなど様々な理由で全日制課程の高等学校に進むことができない青少年に対し,高等学校の教育を受ける機会を与えるために設けられた制度であるが,時代の進展とともに,成人に達してから高等学校での学習を希望する者,進路変更等に伴う全日制課程からの転編入学者や中途退学者など様々な入学動機や生活歴を持つ生徒が多くなっており,全日制課程以上に生徒の多様化が進んでいる状況にある。
 通信制課程においても,様々な入学動機や生活歴を持つ生徒に加えて,近年では,不登校であった生徒も入学しており,定時制課程と同様に,生徒の多様化がますます進んでいる状況にある。
 本県においては,平成3年4月に通信制課程が併設された定時制課程の単位制高等学校を独立校として1校設置したところであり,様々な状況の中で学ぶことが可能である教育機関としての役割を果たしていると認められる。
 今後,ますます多様化が進む生徒に対応するためには,生涯学習の観点に立って,生徒の就学機会の確保や多様な生活実態等を勘案しながら,定時制課程の単位制高等学校を,生徒の通学範囲を考慮してさらに設置する必要があり,また,通信制課程においても,単位制を導入することの検討が必要である。
 定時制課程の単位制高等学校については,午前の部,午後の部,夜間の部など昼夜開講制を採用し,生徒が自分の生活時間に合わせて受講することが可能となる方式の導入について検討する必要がある。
 さらに,定時制課程及び通信制課程には,3年間で卒業することを望む生徒もいることから,その要望を実現するため,定通併修制度等をより一層活用することが必要である。

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