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県指定文化財 書跡
しほんぼくしょじんのうしょうとうき ろくじぞうじぼん

紙本墨書 神皇正統記 六地蔵寺本

 北畠親房の述作になる本書は、書誌学的には自筆本が確認されない現在、多くの写本に依拠せざるを得ません。この写本にも、東寺執行阿刀家旧蔵本の竜門文庫蔵阿刀本の初稿本系統と、石川県白山市白山比咩神社蔵本、いわゆる白山本の修訂本系統が知られています。
 この六地蔵寺本は、先行研究によって修訂本系統に位置付けられ、その点では白山本と同系といえますが、筆写時の底本を異にすると思われます。そして明徳5年(1394)の奥書を共有することから、天理図書館蔵本と同系とみて、その祖本がともに、近江国「東坂本田中宿」において書写されたものであることを知りうることができます。
 本写本の筆写者は六地蔵寺第四世恵潤で、巻二・巻三奥書から大永8年(1528)に筆写を了えたことが明白です。現存する写本は全3冊で、平成5年(1993)に補修されて、虫損の修理や綴糸の交換、表紙の交換などが了えています。巻一(38丁)、巻二(36丁)、巻三(37丁)、このうち後半25丁は1枚ものの綴葉装(てつようそう)から成り、巻三の前半まで全て袋綴装(ふくろとじそう)です。本文は黒の濃墨(こずみ)で漢字と片仮名から成り、漢字には随時振り仮名(朱と黒)が付けられています。加点としては文頭に書かれた天皇歴代の冒頭の朱の小丸、中央の人名・右寄せの地名の朱線、句読の朱点、合点の朱点がみられます。全体として端正なる文字と見受けられます。
 筆写本としてその造本形態を注意深く観察する時、恵潤が底本をかなり忠実・丁寧に書写したのではないかと思われる要素が片仮名表記にみられます。また、念のため六地蔵寺本と白山本の本文とルビを対照させつつ、特に10~12世紀の加点例の他の諸古本の場合と対応させてみると、恵潤期(16世紀前半)の恵潤様の書体と思われるものもありますが、中には古体を継承筆写している「ク、シ、タ、ツ、ホ、マ、レ、ヲ」などの文字もあります。これらの事例から、内外典の筆写をも業とする厳格な僧侶としての日常的姿勢が恵範・恵潤等の場合にもその素地としてあることを認めてもよいと考えられます。すなわち六地蔵寺の常陸真言寺院としての確立期における聖教蒐集の基本原則が偲ばれます。
 このことは、本書巻三にわずかに確認できる箸形の筆記用具角筆(かくひつ)で付けた界線が天・地・行間の区線を示すものであることからもわかります。これによって恵潤は造本上の整形を当初より目論んだと思われます。明治以来、所在不明とされた本書が六地蔵寺所蔵に復したことは、「神皇正統記」諸写本の研究に改めて新たな課題を加えることになりますが、以上の所見からだけでも、本書の写本としての価値がすこぶる高いことがわかります。

 

地図

 

紙本墨書 神皇正統記 六地蔵寺本

 

指定年月日 平成16年1月8日
所在地 水戸市六反田
管理者 六地蔵寺
制作時期 室町時代

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